本研究は、日豪の福祉国家再編の特徴とその政治的ダイナミズムを明らかにする。両国は、雇用保障を通じて市民に社会的保護を提供する点で共通していたが、再商品化と脱家族化が課題となる中で分岐した。豪では1980・90年代に、労働党政権はアクティベーション政策と女性の社会進出に促進的な政策を採用し、90・00年代の保守系連立政権はワークフェア政策と伝統的な家族を優遇する政策を採用した。日本では90年代以降、ワークフェア政策が採用され、介護保険の導入や男女共同参画社会への注目がなされたが、保守派の反動も生じた。両国の分岐は、政治主体の党派性、政治制度、アイディア的要因の差異の相互作用の結果と考えられる。
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