最終年度となる本年度は、「オルタナティブな地域主義」を志向する市民社会ネットワークが発達を遂げる東アジアのメコン地域に注目し、欧州、南北アメリカ、南アジアの事例と比較しながら研究調査を進めた。メコン地域では市場を原動力に急速に開発が進み「新自由主義型地域主義」「開発志向型地域主義」が顕著である。これに対して、タイを中心に国境を越えた市民社会ネットワークが形成され、開発の負の側面に留意した多様な政策提言活動が展開している。タイに拠点を置く「生態系回復地域連合(Toward Ecological Recovery and Regional Alliance=TERRA)」や「メコンエネルギー環境ネットワーク(Mekong Energy and Ecology Network=MEE Net)」、「セーブザメコン連合(Save the Mekong Coalition=SMC)」などの市民社会ネットワークを訪問し、活動実態に関する聞き取り調査と資料収集を行った。加えて、これまでの各地域での事例を踏まえて、新地域主義アプローチ(NRA)とネオグラムアン・アプローチを援用しながら、地域主義におけるトランスナショナル市民社会に関する理論的枠組みを構築した。研究成果として、「もう1つのメコン地域主義-市民社会の視座から」(多賀秀敏編『東アジアにおけるサブリージョナル・ガバナンスの研究-拡大メコン圏形成過程を事例に-』2013~2015年度科学研究費補助金基盤B研究成果報告書、2016年3月)と題する論文を公表した。
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