研究課題/領域番号 |
23730166
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
鈴木 一敏 広島大学, 社会(科)学研究科, 准教授 (90550963)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 相対利得 / 交渉 / シミュレーション |
研究概要 |
相対・絶対利得の論争は利得が固定された2x2ゲームの枠内で行われており、自国と相手国、および他の第三国同士の対戦結果が、将来の利得構造に累積的な影響を与えることは想定されていない。このような環境のもとでは相対利得の影響を過小評価する恐れがあるうえ、どのような条件の際に相対利得を考慮に入れる必要があるのか、無いのかも不透明である。そこで本課題では(1)こうした要素を組み込んだ一般性のあるモデルを作成し、(2)どのような条件下において相対利得が合理性を持つのかを包括的に検証することを目的とする。平成23年度の目標は主にモデルの作成であった(上記(1))。マルチエージェント・シミュレーション(MAS)を用いて、動態的な2×2ゲームのモデルを作成すること。そして、個々のエージェントの行動ルール、複数のエージェントの行動順序、相互作用の方法などを具体的に規定し、内部ロジックを検証すること、さらには、その結果に対する頑健性を検証出来るような体制を整えることであった。平成23年度中に、過去の成績によって利得が動的に変化する2×2ゲームを連続的に実行し、なおかつ、様々な状況下で相対利得と絶対利得の優位性を比較できるようなモデルを作成した。さらにRAの協力を得て、初期配置ルール、交渉ルール、終了条件など各部分の内部ロジックの検証(デバッグ作業)を行った。また、結果に対する頑健性検証の態勢を整えることができた。これにより、24年度に行う予定である実験のモデル面での準備がほぼ完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国会の予算通過の遅れによる内定時期の遅れ、さらには、予算があとから削減される恐れがあるとの通知があったので、特にRA関連経費(RA雇用費用、RA用シミュレータ購入費)の執行を一時見合わせざるを得なかった。このため、特にモデル検証にかかる一部作業への取りかかりが数ヶ月遅れてしまったが、モデルの実行に関わる中核部分の作業から優先して行うことで、研究計画に記した最低限の内容は年度中に達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
23年度に作成したマルチエージェント・モデルを用いて、どのような条件下で、相対利得を考慮する戦略が、そうでない戦略よりも優位に立ち生き残るのかを分析する。条件は、「プレイヤーの数」、「ゲームの性質(「囚人のジレンマ」における誘惑の強さ等)」、「プレイヤーの非対称性(国力の分布のありかた)」、「相対利得の性質(力の差の小さな相手に強く効きやすいか否か)」等を組み合わせる。頑健性の検証や変数を追加しての検証をしたのち、結果を解析し、順次国内外の学会等で成果を発表してゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備: 長期の演算が必要となるため、高速かつ安定性に優れたワークステーションを計上した。CPU価格は年々下がる傾向にあるので、実験が本格化する2年目に計上した。旅費: 信頼性の高い研究を進めるために、シミュレーションだけでなく、ゲーム論等を専門とする研究者による助言および最新研究の動向調査が必要である。期間中、ゲーム論関連の研究会(年2回)、シミュレーション関連の研究会(年2回)と2つの学会での調査を予定している。開催地が未定の場合もあるので、国内旅費は仮に広島-東京間(各年6回分)として計上した。また、研究成果を国際学会で発表することを目指すため、24年度には海外旅費を計上している。謝金: 複数人によるモデルルールの検証が必須であるため、謝金を計上している。23年度は、予算削減の恐れ等から執行を数ヶ月遅らせざるを得なかった。そこで作業に優先順位をつけ、研究計画を進める上で不可欠な部分から検証を実行した。これに伴い実行ルールに直接関係しない部分(主に出力、解析にかかる部分)の作業およびその検証にかかる予算を、作業を一部24年度に繰り延べている。
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