研究課題/領域番号 |
23730168
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
益尾 知佐子 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (90465386)
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キーワード | 中国 / 海洋 / 地方外交 / 尖閣諸島 / 漁業 |
研究概要 |
昨年度は、まず中国の対外関係に関する多様なアクターの実態を解明することに焦点を置き、周辺諸国との摩擦の一因となっている漁業分野に着目した研究を行って、『Japanese Journal of Political Science』誌に英文で論文を発表した(Chisako T. Masuo, “Governing a Troubled Relationship: Can the Field of Fisheries Breed Sino-Japanese Cooperation?”, Vol.14 Part1, March 2013, pp. 51-71)。またこれに関連するテーマで、2012年5月に新潟県立大学主催の国際シンポジウム、2013年2月に米国ブルッキングス研究所のワークショップにおいて英語で、同じく2013年2月にベトナム社会科学院中国研究所のワークショップにおいて中国語で報告を行った。 次に、日中国交正常化以降の尖閣諸島をめぐる日中関係の変遷についてまとめ、2012年10月の日本国際政治学会で報告した(ペーパーあり)。さらに中国外交の協調的な側面にも目を向け、東南アジアとの経済協力における中国の省級政府の役割についても研究を進め、年度末までにペーパーをまとめて、2013年度初めに米国で開催されたInternational Studies Association年次大会での報告に備えた。 最後にこのような研究活動の過程で、中国、ASEAN諸国、韓国、米国、日本のさまざまな研究者や官僚から中国の対外活動に関する意見を聞き、今後の研究活動への示唆を得るとともに、現在の研究をさらに展開していくための人的リソースの構築にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は中国外交のアクターについて、これまでよりもかなり視野を広げて考察を行った。その結果、中国社会の多様なプレーヤー(組織・個人)の活力が中国と周辺諸国との関係を変容させ、また時には緊張させていることを具体的に考察することができた。国内外に向けて日本語・英語・中国語で対外発信を行い、その過程で少しずつ研究成果をまとめることもできたため、最終年度となる来年度にある程度の成果をまとめて発表することが可能と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
中国の対外関係の変化について、海洋政策の動向(「硬」の側面)およびASEANとの経済協力(「軟」の側面)の双方に目配りしながら研究を行いたい。中国国内で収集できる情報に限りがあるため、中国国内だけでなく周辺国での関連情報収集にも力点を置き、こうした国々の有識者への聞き取りを行いながら研究成果をまとめ、国際的な学会誌に論文を投稿する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
米国等で学会報告を行い、海外の研究者からのフィードバックを得る。外国の有識者との意見交換のため、小規模の国際ワークショップを開催するか、自ら海外で調査を行う。また人民日報などのオンラインデータベースを購入して研究成果の取りまとめに活用し、執筆した論文を国際誌に投稿するため学術論文の校閲(ネイティブチェック)を委託する。
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