研究課題/領域番号 |
23730181
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工 |
研究代表者 |
久保田 徳仁 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 人文社会科学群, 准教授 (00545858)
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キーワード | 国際平和活動 / ルワンダ / 南アフリカ共和国 / ナイジェリア / 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究プロジェクトの目的は、国際平和活動の軍事要員を提供する各国の動機を探ることにある。特に政治体制と要員提供のタイプに注目し、各国の政治体制の違いによって要員提供の動機、仕組みがどのように異なるのか、そして、民主化や軍事クーデタといった政治体制の変動が国際協力活動にどのような影響を及ぼすかを明らかにするることを目的としている。 平成24年度の研究の主眼は①ルワンダ共和国における現地調査、および②計量研究のための統計データのデータセット作成にあった。①は、これまでの計量分析が十分な成果を上げてこなかったことからモデルの再構築のために質的でオープンエンドな調査をする必要があるためである。②はこれを反映して新たにデータセットを整備し、計量研究を通じて実証を行うためである。 ①のルワンダ共和国における現地調査は、在京ルワンダ大使館でのインタビュー、日本のルワンダ研究者に対する協力の要請とブリーフィング受け、といった綿密な準備の上で現地入りし、多くの関係者(軍関係者、警察関係者、国際赤十字、各国大使館要員)に対してインタビューを行った。多くの協力を経てインタビューはおおむね成功し、膨大な資料の取りまとめを行い、現在はこれをもとに論文を執筆中である。 ②に関しては前年から十分進んでいないのが現状である。その一つの原因として、本研究プロジェクトの仮説として考えられていた政治体制と要員提供パターンの組み合わせが、想定以上に複雑で、より詳細に事例研究を実施しなければ、計量研究の用いる計量モデルの定立が不可能であることが判明したためである。ルワンダの事例ではジェノサイド後の体制変動は独裁化を引き起こしており、これと現政権の積極的な国際協力は単純なモデルでは説明つかない。現在は現地資料を基にこの複雑性を中範囲のレベルで理論化しようと試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初本研究プロジェクトは事例研究(南アフリカ共和国、ルワンダ、ナイジェリアにおいて実施を予定)と計量研究の二本立てで行う予定であり平成24年度中に両方を完成する予定であった。しかし、概要で述べたとおり、事例研究で想定以上の複雑性が判明し、モデル化が難しいことが分かり、計量研究に着手できなかった。先行してデータセットのひな型は作成してあるものの、データセット作成に必要である各変数の操作的な定義の整備や、大まかな仮説は今のところ出来ていない。 2つ目の柱である事例研究も必ずしも順調ではなかった。当初ナイジェリアにおいてもインタビューを実施する予定であったが、情勢の悪化に伴い実施できなかった。 しかし、平成23年度に実施した南アフリカ共和国に関する事例研究はインタビュー語の資料整理も一段落し、取りまとめを経て、論文として出版される予定である(平成25年9月刊行予定)。 本年度実施したルワンダでのインタビューの資料整理はやや遅れているものの着実に進んでいる。当初は2度の訪問が必要と思われたが、大方の資料収集は完成しており、現有資料を基に論文執筆を行う予定である。 研究成果の発表については上述南アフリカ共和国に関する論文出版から順次行う予定である。事例分析を行ったのちに計量研究まで到達できるという見込みは現在も変わっていないが、最終的な成果としてまとまるためにはもうしばらく時間が必要と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところデータセットを整備し、計量分析までつなげられる見通しは立っていないため、事例研究を続ける予定でいる。ルワンダと南アフリカ共和国の政策変化の比較を通じて、体制変動と国際平和協力政策がどのように連動しているかを丁寧に分析することで、中範囲ではあるが一般可能な命題の導出は可能と考えられる。 残予算の制約もあるため研究対象としてもう一か国を増やすことはやや難しいと思われるが、可能であればナイジェリアの調査を(試行調査レベルでよいので)始めたいと思っている。南アフリカ共和国のように非軍事権威主義体制からの民主化、ナイジェリアのように軍事独裁体制からの民主化、そしてルワンダのように軍事独裁体制間の政権変化と対外関係の劇的な変化、という3つの対照的な事例が並ぶことによって、当初の仮説である、体制変動と国際平和協力の連動の分析に何らかの結論を出すことができると思われる。ただし、現時点でわかっている通り、各事例で分析される政治変動は、当初のそれよりはるかに複雑で、国際平和協力との関係も簡単ではないことが予想される。単純なモデル化を目指すのではなく、ある程度の複雑性を受容し、場合分けを用いたモデル化を進めていく予定である。 この方向性で研究を進めることができれば来年度計量研究をスタートさせることができるはずである。 出版については、各事例研究を単体で論文として執筆刊行することを優先する。そのうえでこれらを架橋するモデルの作成を計量分析を行いながら実施していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度(平成25年度)に繰り越すこととなった予算額は267,406円である。ルワンダの調査旅行の費用が278,000円余りであったことから、ナイジェリアにおける調査には若干予算不足となる可能性が高い。しかし、円高等によって費用が十分賄えるようになれば、現地調査を行いたい。この現地調査の可否については6月あたりをめどに結論を出す予定である。 現地調査ができない場合、海外での研究発表のための費用に充てたい。南アフリカとルワンダに関する個別の分析を行ったのちに、比較事例分析を行い、仮説導出まで行い、研究成果を公表していきたい。この場合は論文執筆時の英文校正と学会までの渡航費として研究費を使用することになる。
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