最終年度である平成26年度は、研究成果として得られた理論的帰結を論文としてとりまとめること、またその成果を海外・国内で報告することを中心に活動した。本研究課題の直接的成果は、2本の論文としてほぼまとめており、有力国際ジャーナルへの掲載を目指し口頭報告及びその知見を得ての改訂を行っている。 具体的には、2014年4月は南フランスのエクス・マルセイユ大学で滞在研究及び、研究成果のセミナーでの報告を行った。6月南西フランスのSKEMAにおいて滞在研究およびカンファレンス報告を行った。また2015年1~3月にかけては、アメリカにおいて経済成長分析が最も盛んであるブラウン大学に滞在し、セミナー報告及び現地専門家との討議を行った。その他、京都大学・東京大学・神戸大学でも成果報告及び討議を行った。 成果の内容としては大きく二つに分けられる。一つは、長期の経済成長を、プロダクトサイクルを通じた財の移り変わりによって説明する理論である。従来の理論では、長期の成長を単一の最終財を想定して説明するため、経済成長の持続のために強いナイフエッジ的な外部性を仮定する必要があった。一方、プロダクトライフサイクルを明示的に考慮し、仮想的な最終財という想定を置かない場合は、従来理論よりも柔軟な設定下で長期成長が説明できることがわかった。もう一つの理論は、大きな技術的変革がなぜ発生し、それがどのように財(応用プロダクト)の導入パターンや経済成長率の変動に繋がるかを明らかにするものである。従来の研究では、個別財の開発を内生的に説明する一方、大きな技術変革はそれとは別個に外生的に想定することが多かった。本研究課題により得られた理論においては、個別財の開発のための研究開発と、その集積による大きな技術変革を統一的に説明できたことが成果であると言える。
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