研究課題/領域番号 |
23730187
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤本 淳一 東京大学, 経済学研究科(研究院), 講師 (00507907)
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キーワード | マクロ経済学 / 労働サーチ理論 |
研究概要 |
本研究の主目的は、労働者の年齢を明示的に扱うライフサイクル・労働サーチ・マッチング・モデルを用いた、ライフサイクル上の雇用・失業問題の分析である。平成25年度には以下の二論文を通じ、モデルの理論・応用両側面を探求した。 Fujimoto (2013)は理論的研究である。ライフサイクル・労働サーチ・マッチング・モデルの理論的分析に係る先行研究では、単一の労働市場が仮定されていた。これに対しFujimoto(2013)では、労働者の年齢別に異なる労働市場が存在するとの仮定下でモデルを分析し、単一労働市場モデルとの違いを論じた。本論文はEconomic Lettersに掲載された。 Esteban-Pretel and Fujimoto (2013)は応用的研究に属し、米国労働市場における離職率・就職率・失業率の年齢による変化につき分析している。本論文では、企業と労働者の間のマッチの質が判明する確率が熟練労働者の方が高くなるメカニズムを導入することにより、データと整合的な結果を得た。本論文は、International Economic Reviewに掲載予定である。 (参考文献) Esteban-Pretel and Fujimoto (2013): “Life-cycle Labor Search with Stochastic Match Quality” (with Julen Esteban-Pretel), International Economic Review, forthcoming. Fujimoto (2013): “A Note on the Life-cycle Search and Matching Model with Segmented Labor Markets”, Economics Letters 121(1), 48-52.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既に述べたように、本研究においてはライフサイクル・労働サーチ・マッチング・モデルを理論・応用面双方から探求していくことを目指している。若年者の失業や中高年のリストラなど特定の年齢層に関係する労働問題は多い一方、このようなモデルを用いた先行研究は未だそれほど多くないことから、研究の重要性は高いものと考えられる。 これまでの取り組みにおいて、理論・応用の両側面につき理解を深めることができ、単著・共著合わせ三本の論文が掲載済又は掲載決定に至った。最終年度である平成26年度においては、未だ解明されていない問題に引き続き取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
以前より取り組んでいる、(1)企業特殊的人的資本の蓄積を用いてデータ上観測される長期の生産性成長率と失業率との間の負の相関を説明したFujimoto(2007)、(2)企業が企業特殊的人的資本への投資額を掲示し、労働者と費用を共同負担する環境下では、労働者が年齢別に異なる投資額を選好する結果、年齢差別を禁ずる法規制下でも労働市場が年齢別に内生的に区分される均衡が生じうることを示したFujimoto(2010)、(3)ライフサイクル・労働サーチ・マッチング・モデル下で特に有用な動学的契約アプローチの導入時に金利を如何に内生化するかにつき理論的に考察したFujimoto(2011)、の三論文につき、国内外での学会やセミナーでの論文発表の反応等に基づき適宜改訂を続けると共に、適切な国際学術雑誌に投稿して掲載を目指す。 (参考文献) Fujimoto (2007): “Implication of General and Specific Productivity Growth in a Labor Search and Matching Model”, mimeo. Fujimoto (2010): “Shared Investment and Efficiency in a Life-Cycle Labor Search and Matching Model”, mimeo. Fujimoto (2011): “Closing Labor Search Models in Contractual Environments”, mimeo
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度に完成予定であった論文につき、議論するケースを追加することにより結果の一般性が大きく増加することが判明したので、計画を変更して論文を拡張することにしたため、未使用額が生じた。 上記の論文の拡張は高度に理論的な内容に関わるため、分析に必要な書籍・ソフトウェア等を購入する他、議論に間違いがないよう万全を期すため、国内外で発表して専門家のフィードバックを得る予定である。未使用額はこうした物品費・旅費、更には論文完成後の英文校閲費に充てることとしたい。
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