研究課題/領域番号 |
23730194
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
上條 良夫 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (40453972)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | オークション / インターネット検索エンジン / 広告 / 一般化第二価格オークション / VCGメカニズム / ゲーム理論 / コンピュータシミュレーション / 制度 |
研究概要 |
キーワードオークション(検索連動型広告オークションともよばれる)に関するゲーム理論を用いた理論・シミュレーション分析により、現行制度にどのような合理性があるのかを明らかにする。現行制度は、第二価格オークションを採用していることに加えて、広告枠数に制限がある、個人の入札額が隠匿されている、などの特徴を有する。これらの制度の詳細は、入札者の行動、オークション主の収入、などにどのような影響をもたらすのか。また、検索エンジン間での異なる制度の採用はどのように説明できるのか。これらを明らかにする。【研究1】これまでの研究により、上位の広告枠ほどクリック率に対しての限界収入が大きい、ということが明らかにされている。最適広告枠数の存在も、上位広告枠を強調することも、これより説明できる。本年度の研究により、この性質が通常オークション理論で想定される条件下で成立することが明らかにできた。また、最適広告枠数が広告主の人数、分布の形状などによりどのように変化するのも明らかにできた。【研究2】Kamijo (2010) では、入札額が秘匿された環境での入札行動についての分析はされが、入札額を秘匿にすることで検索エンジンにどのようなメリットがあるのかは議論されていない。そこで【研究2】ではKamijo (2010)で提案された入札行動と、Cary et al. (2007) が提案した入札額が公開されている環境での入札行動をそれぞれコンピュータシミュレーションで走らせ、均衡までの収束スピード、均衡に至るまでの検索エンジンの収益、などにどのような差異があるのかを明らかにした。シミュレーションの結果、入札額が秘匿されている状況では、検索エンジンの収入を上げ、広告主、特に評価値の高い広告主、の収入を下げる可能性があることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
【研究1】、【研究2】ともに当初の目的をすでに達成しており,結果は論文としてまとめられ、現在査読雑誌へと投稿中である。これは当初想定したペースよりも半年ほど早い状況である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り,24年度には【研究3】(留保価格の設置)に関する研究を行う。留保価格の設置については、Myerson (1981) の結果を応用することにより、ある留保価格が設置された一般化第二価格オークションが検索エンジンの期待収入を最大化することが示せる。この意味で、検索エンジンが留保価格を設置することは自然である。しかし、近年 Google は留保価格の設置を取りやめた。この事実はどのように解釈できるのか。これを説明する一つの有力な仮説は、(広告枠数の制限)はある程度(留保価格の設置)の効果を代替する、というものである。この点を明らかにするため、(ステップ1)最適広告枠数をとっているときと最適留保価格を設置しているときとでは、検索エンジンの期待収益はどの程度異なるのか、(ステップ2)最適留保価格が存在しない環境では、広告枠数の制限と留保価格の設置の間の優劣はどのようになるのか、という点を、コンピュータシミュレーションと理論により明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究用の書籍の購入代金,現在投稿中の論文に関して,修正要求や書きなおしなどが生じた際の英文校正代金,出張費,出張用のPCの購入費用,研究補助者への謝金の支払い,などを予定している。
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