研究期間の初年度では,研究目的である「世代人口の可変性を考慮した世代間衡平性の公理的分析」について,論文"Infinite-horizon social evaluation with variable population size"を執筆した. 次年度では,前年度執筆論文を社会的選択理論の国際学会である11th International Meeting of the Society for Social Choice and Welfareにて報告を行い,専門家からのコメント収集および推敲検討を行った. 最終年度では,上述の国際学会報告論文の最終的な推敲を,以下の通り行った.まず,当該論文の成果は大きく3つある.第1に,世代人口の可変性を考慮した世代間衡平性の公理的分析のための分析枠組みを提示し,厚生主義(各世代構成員の効用値にのみ基づいた各時点の社会状態の無限視野経路の優劣評価をすればよい)という結果を示した.第2に,厚生主義による優劣評価方法として,critical-level utilitarian social welfare relationと呼ばれる優劣評価方法を提示し,どのような公理(望ましい性質)を満たす唯一の評価であるか明らかにした.第3に,average utilitarian social welfare relationと呼ばれる優劣評価も提示し,どのような公理を満たす唯一の評価であるか明らかにした.これら3つの貢献を有する当該論文はやや長大であり,学会でのコメントに基づいて,第1・2の成果をまとめた論文と,第3の成果をまとめた論文に分けることとし,それぞれ執筆と推敲を行った. また,世代間衡平性の公理的分析における世代の取り扱いについて検討した邦語論文を共著で執筆し,『新しい政治経済学の胎動』(勁草書房)の第2章に採録された.
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