研究課題/領域番号 |
23730198
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
古川 雄一 中京大学, 経済学部, 准教授 (50510848)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / 国際情報交流 / 中国: イギリス |
研究概要 |
知的財産保護が経済成長に与える影響について、定性・定量の両面から研究を進め、次の成果をあげた。定量分析については、研究協力者であるAngus C. Chu(Durham University)との共同研究において、知的財産保護の政策ツールが複数ある理論モデルを構築した。そのモデルを適切にカリブレートすることによって、知的財産保護の政策ツールが複数あることによる経済厚生のゲインが、ツールが一つしかないケースと比較して、定量的に十分に大きいことを明らかにした。 定性分析については、2つの研究を行った。 1.研究協力者である秋山太郎(横浜国立大学)、矢野誠(京都大学)とともに、南北モデルの枠組みにおいて、企業による私的な知的財産保護投資の役割を明らかにした。具体的には、(1)私的保護投資が経済成長に寄与するかどうかを決定する2つの要因を特定した。私的保護投資とイノベーション投資の相対効率性と発展途上国における法的な知的財産保護水準である。加えて、(2)法的な知的財産保護水準とイノベーション率の関係が逆U字型になることもわかった。 2.研究協力者であるAngus C. Chuとともに、蓄積型イノベーションと知的財産保護の関係を分析した。とくに、(応用研究ではなく)基礎的な研究に対する知的財産保護の強化が経済成長および経済厚生を損なう可能性を明らかにした。 以上の結果は、これまでの知的財産保護と経済成長に関する理論研究において明らかにされてこなかったもので、この分野の既存研究を発展させることに成功している。研究を進める中で、研究成果の報告を国内外のカンファレンス、セミナーにおいて行った。成果の一部は公刊論文として、査読付き国際学術誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の開始時に研究目的に掲げた内容は一通り達成されたといえる。具体的には、(1)累積型イノベーションに対する知的財産保護のモデルを開発したこと、(2)企業の私的な知的財産保護投資のモデルを構築し、「市場の質理論」が提示するような、知的財産保護制度が内生化されたモデルを構築できたこと、(3)知的財産保護が経済成長に与える影響を定量的に測定できたこと、(4)これらの分析結果を国内外で報告し一部を公刊論文として査読付き国際雑誌に掲載できたことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方向性として、(1)知的財産保護が経済成長に与える影響の定量分析をさらに行う、(2)知的財産市場の質の内生化をより明示的に分析する、(3)複数の国が共同で行うグローバル・イノベーションにおける知的財産保護の役割をモデル化する、(4)これまで構築した理論モデルと現実経済との対応を明確にしながらその精緻化を図ることが考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究プロジェクトを運営する上で最低限必要な環境は今年度末の段階ですでに整っている。したがって、次年度の研究費は、おもに研究成果の周知と公表のために使用されることとなる。具体的には、学会・セミナー報告のための出張旅費、研究成果を国際学術誌に投稿する際の英文校閲料、投稿料、研究の周知のためのウェブページ作成費用等が主な使用目的となる。加えて、新たな共同研究を進めるための打ち合わせのためにも充てられる。その他状況に応じて適宜、必要な書籍購入、電子論文・ソフトウェアの購入も行う。
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