研究課題/領域番号 |
23730198
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
古川 雄一 中京大学, 経済学部, 准教授 (50510848)
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キーワード | 国際研究者交流 / 国際情報交流 / イギリス; スイス |
研究概要 |
知的財産保護が経済成長に与える影響について、さまざまな視点から定性・定量的に分析を行い、次の成果をあげた。 定性分析としては、Liverpool 大学(イギリス)の Angus Chu 教授との共同研究(Chu and Furukawa 2013, Southern Economic Journal) において、基礎研究に対する特許保護の強化が、経済成長や長期的な経済厚生政策を損なう可能性を明らかにした。分析は、秋山(2008)による2段階イノベーションを伴う内生的成長モデルに基づいて行われた。基礎研究に関する特許保護の役割あるいはその是非については、遅くとも1980年代より分野横断的に活発に議論されているにも関わらず、経済成長の観点からの理論分析は十分ではなかった。その意味において、この研究成果は、この分野の先端研究をさらに一歩推し進めることに貢献したといえる。 定量分析については、Furukawa (2012, CUIE Paper 1203) において、研究開発企業の生き残り活動を内生化した経済成長モデルを構築し、カリブレーション分析を行った。データと整合的と思われる知的財産保護の程度を所与とし、現実の研究開発補助金政策がイノベーション率や経済成長を促進しているかどうかについて検討した。 これ以外に、ザンクトガレン大学(スイス)の Guido Cozzi 教授との共同研究を含め、多くの新しい研究成果をディスカッション・ペーパーとして公表した。それらはすべて研究代表者のホームページ(http://www.furukawa-yuichi.org)において、本科研費プロジェクトの研究成果として公表されている。また、国際学会におけるプレゼンテーションも積極的に行い、研究成果の国際的周知の徹底をはかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いくつかの公刊・未公刊論文によって、本研究の所期の目標は一通り達成されたと考えられる。具体的には、(1)累積型イノベーションに対する知的財産保護の役割を明らかにしたこと、(2)「市場の質理論」に基づき、企業の私的な知的財産保護投資によって知的財産保護が内生化されたモデルを構築したこと、(3)知的財産保護が経済成長に与える影響を定量的に測定できたこと、(4)これらの分析結果を国内外で報告し一部を公刊論文として査読付き国際雑誌(JEDC, Southern Economic Journal)に掲載できたこと、(5) 未公刊論文の投稿作業についても順調に進行している点が挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方向性として、(1)これまでに執筆した未公刊論文の国際的な査読付き雑誌への投稿・掲載を戦略的かつ積極的に行うこと、(2)研究結果のさらなる周知を達成すべく、国際学会におけるプレゼンテーションを活発に行うこと、(3)これまで構築した理論モデルと現実経済との対応を明確にしながらその精緻化を図ることが考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額(‐33839円)が発生した理由は、当初計画していなかった研究出張(Market Quality Workshop でのセミナー報告および研究打ち合わせ)によるものである。 その他の次年度研究費については、研究プロジェクトを運営する上で最低限必要な環境は今年度末の段階ですでに整っていることもあり、おもに研究成果の周知と公表のために使用されることとなる。具体的には、学会・セミナー報告のための出張旅費、研究成果を国際学術誌に投稿する際の英文校閲料、投稿料、研究の周知のためのウェブページ作成費用等が主な使用目的となる。加えて、海外の共同研究者との研究を進めるための打ち合わせのためにも充てられる。その他状況に応じて適宜、必要な書籍購入、電子論文・ソフトウェアの購入も行う。
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