研究課題/領域番号 |
23730199
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
平口 良司 立命館大学, 経済学部, 准教授 (90520859)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 政策協調 |
研究概要 |
第1に、本研究の成果の具体的内容について述べる。これは大きく2点に分けられる。内容の一点目は、失業問題を抱える2つの国から構成される国際経済モデル、具体的には2世代重複モデルを構築したことである。当該モデルにおいては、貨幣の存在理由を明確に描写した。内容の2点目は、モデルにおいて、ある国における金融緩和政策が別の国にどのような影響を与えるか、雇用、そして社会厚生の両面から分析したことである。第2に、当該研究の意義は、雇用状態を明確に描写した開放経済モデルを構築し、その中で政策協調のありかたについて分析したことである。国際経済モデルを用いた既存の政策分析においては、計算の簡単化のため、完全雇用が仮定されている。その非現実的ともいえる仮定を取り除いたことが当該研究の最大の意義といえる。第3に、当該研究の重要性は2点に分けられる。第1点目は、当該モデルにおける結果が、政策協調に関してこれまで信じられてきたいくつかの仮説に反するものであったことである。特に、既存の理論においては、自国における金融緩和は、為替レートの減価を通して他国の経済を悪化させるとされてきた。しかしながら、本研究においては、金融緩和が穏やかなものである限り、他国の雇用を改善できるということが示された。これはある意味驚くべきものであるといえる。第2点目は、モデルの結果がすべて解析的に導かれているという点である。本モデルは2国モデルであり、かつ雇用の決定問題や、貨幣の保有の必要性について明確に描写されているため、既存モデルより複雑なものになっている。しかしながら私は、効用関数を対数関数に限定することで、失業率を両国の貨幣供給量の明示的な関数として導き出すことに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画において、23年度の目標は、失業問題を抱える国々から構成される国際経済モデルを構築し、モデルの均衡を導出することであった。昨年度私は、そのようなモデルを実際構築し、均衡を明確に求めることができた。それに加え、均衡失業率をパラメータの関数として明確に表現できたため、当初の計画以上にはかどっているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
24年度の研究に関しては、交付申請書の研究計画に基づき、昨年度構築したモデルにおける金融政策の在り方の研究を行いたい。特に、両国にとって望ましい金融政策、具体的にはパレート最適となる金融政策がどのような性質をもつか分析したい。そしてその政策が、従来のモデルにおいて望ましいとされた金融政策とどのように異なるか分析したい。可能であれば、数値計算などを通して、現代社会において望ましい経済政策協調のあり方、具体的には日米の政策協調のありかたについても考えたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
24年度は、モデルを使った数値計算を行うために、ソフトウェアのマセマティカを研究費で購入したい。また、当該研究で得られた結果について、小樽商科大学、京都大学経済研究所、岡山大学経済学部、大阪大学社会経済研究所、東北大学経済学部にて研究発表を行う計画をたてている。その旅費にも研究費を使用したいと考えている。
|