研究課題/領域番号 |
23730199
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
平口 良司 立命館大学, 経済学部, 准教授 (90520859)
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キーワード | 失業 / サーチ / 金融政策 |
研究概要 |
24年度においては、23年度に引き続き、失業の存在を考慮した貨幣的一般均衡モデルにおける金融政策のありかたについて研究を行った。23年度は重複世代モデルを主に研究したが、24年度においては、無期限期間モデルを分析した。具体的には、ウィスコンシン大学のライト教授により開発された、閉鎖経済における貨幣的サーチモデルを開放経済モデルに拡張し、さらにそのモデルに失業の概念を導入し、最適金融政策のありかたを導出した。まず私は、モデルにおける最適金融政策が、名目利子率を0%にするフリードマンルールには従わず、正の名目利子率が、社会厚生を改善することを示した。フリードマンルールは、閉鎖経済におけるほとんどの貨幣的動学的一般均衡モデルにおいて最適となっているため、開放経済における金融政策の在り方が、閉鎖経済におけるそれと大きく異なることを示したことになる。そして、望ましい物価上昇率が、失業が存在しない場合におけるそれよりも厳密に高くなることを示した。上記の結果は、重複世代モデルにおける結果とほぼ同じである。次に、失業率は、物価上昇率に関してU字型の関係を持つこと、つまり物価上昇率があるしきい値以下の場合は、失業率は物価上昇率に関する減少関数となり、そのしきい値を超えると、失業率は物価上昇率とともに上昇することを示した。私が23年度に取り扱った重複世代モデルにおいては、失業率は物価上昇率の単調減少関数となるため、結果が2つのモデルで異なることが分かった。失業率と物価上昇率の非単調な関係は、アメリカにおける過去40年間の失業率と物価上昇率の長期的関係と合致するため、24年度において私が構築した無期限期間モデルのほうがより現実経済を表現していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
失業を考慮した貨幣的開放経済モデルにおける最適金融政策の在り方を解析的に導出できたという点で研究は比較的順調に進展しているといえる。特に閉鎖経済における最適政策と大きく異なることを示した点で、意義のある結果といえる。しかしながら本研究における望ましい物価上昇率の数値計算による導出にやや時間がかかっている。また、研究結果を諸大学にて発表することもまだ行っていない。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、各国において望ましい物価上昇率の値をmatlab等のソフトウェアを用いて数値計算で導出したい。そしてその値が、現実経済における物価上昇率目標としてよく使われる値(2%程度)とどの程度異なるのかを明らかにしたい。また研究結果を小樽商科大学、広島大学、北海道大学、大阪大学、東京大学において開催される研究会にて発表し、他研究者からコメントをもらい、論文を改善する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度において使用する予定の研究費計14万2705円が生じたのは、研究結果の大学での発表をまだ十分に行っていないためである。次年度においては、小樽商科大学、広島大学、北海道大学、大阪大学、東京大学において開催される研究会にて研究発表を行い、さまざまな分野の研究者からフィードバックを受けたいと考えている。研究費はそのための旅費にあてる予定である。また、数値計算において有用となる、最適化に関するmatlabのソフトウェアも購入したい。
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