研究課題/領域番号 |
23730202
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
尾崎 祐介 大阪産業大学, 経済学部, 准教授 (80511302)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高次リスク / リスク回避度 / 確率支配 / 比較静学分析 / 経済実験 |
研究概要 |
今年度は研究課題に関連した研究として以下の二つを主に行った。・Eeckhoudt and Schlesinger (2006) が提案した高次リスクを表現する枠組みを用いて、局所的な高次リスク回避度の尺度を特徴付けた。これは Arrow-Pratt 近似を繰り返し用いることで導出し、Arrow-Pratt の絶対的リスク回避度の尺度の一つの一般化になっていると見なせる。結果を論文としてまとめて、国際誌に投稿したが、残念ながら不採択になってしまった。査読者からのコメントを参考にして、改訂作業を続けている。近年、Ross のリスク回避度の尺度が高次に一般化された分析が進められている。この研究成果を適用することで、Eeckhoudt and Schlesinger (2006) の枠組みでの高次リスク回避度の特徴付けについて検討している。最終的には、改訂作業を続けている論文と組み合わせて一つの論文にする予定である。・Eeckhoudt and Schlesinger (2006) の枠組みを用いた高次リスク回避度の実験が盛んに行われている。しかし、高次リスク回避度の尺度の実験による検証はほとんど行われていない。本研究課題も含めて Eeckhoudt and Schlesinger (2006) の枠組みを用いた高次リスク回避度の尺度がいくつか提案されているが、理論的に不完全であり、尺度の実験には適用できないことが原因として考えられる。そこで、Jindapon and Neilson (2007) の枠組みを合わせることで高次リスク回避度の尺度の実験を進めている。Jindapon and Neilson (2007) の枠組みを実験に適した形に改良し、リスク回避度の検証を行った。この検証は関数形を特定化せずに行っていること、また高次リスク回避度の尺度に一般化できることに特徴がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究で理論の基礎的な部分はほぼ分析を終えたので、順調に研究経過は進んでいると言えるだろう。しかし、研究成果を学術誌へ刊行することが重要なので、分析だけではなく、プレゼンテーションなども含めて研究成果を効果的に伝えることについては十分ではなかった。来年度に向けて、論文の改訂作業を行うなかで、学術誌へ刊行する水準の研究に仕上げていきたい。また、理論の基礎的な結果を応用するという点ではほとんど研究を進められなかった。来年度は改訂作業と並行して、応用研究にもしっかりと取り組んでいきたい。近年ではアウトリーチ活動も研究の重要な要素になっているので、大学が提供する市民講座などを活用して、広く研究成果を伝えることにも留意していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は理論と応用のバランスを取って進めていきたい。最初に理論について述べる。理論に関しては昨年度から進めている研究を継続して行うことになる。近年、Ross のリスク回避度の尺度を高次に一般化した研究が進められている。この研究成果を、Eeckhoudt and Schlesinger (2006) の枠組みに適用することで、新しい高次リスク回避度の尺度を局所的、大域的の両方について特徴付けを行う。また、昨年度行った研究と関連についても明らかにする。最終的には、昨年度の研究と合わせて一つの論文にまとめ、国際誌への刊行を目指す。次に応用について述べる。今年度は行動経済学を念頭に置いて、一般化期待効用理論に取り組む予定である。特に、Bell (1982) などによって提案された後悔を取り込んだ一般化期待効用を用いる。応用としては自己保険などの分析に取り組む。分析では効用関数の交差微分が重要な役割を果たすと予想される。この解釈に Eeckhoudt and Schlesinger (2006) で提案された枠組みを用いる。Eeckhoudt and Schlesinger (2006) の枠組みを使い、Eeckhoudt, Rey and Schlesinger (2007) は二変数効用関数の交差微分の直感的な意味を明らかにした。これが分析の直感的な意味付けも可能にする。理論と応用は同時進行で行うが、前半はより理論に重点を置いて行い、後半は応用に重点を行うようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は理論の研究成果をまとめた論文をまとめるので、その研究発表を行うために国内外の学会や研究会に参加する予定である。そのための旅費を申請した。また、研究発表するだけでなく、関連する研究の発表がある学会や研究会に参加することで情報収集にも努めたい。研究開始時期に比べて、関連する研究の刊行が増えているので、新しい研究も含めてしっかりと目配せする必要がある。その他では携帯に便利なノートパソコンを申請した。共同研究も含めて出張して研究する機会が増えており、なるべく研究室に近い環境を出張先でも再現するために、高性能のノートパソコンを購入する予定である。また、研究が順調に進めば、理論を確かめる実験にも着手したいので、その人件費も申請した。その他は、研究に関連した書籍や雑誌、また、英文校正費などの申請である。
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