労働証券論とは、労働評価の格差是正と地域コミュニティにおける協同性の回復を目指し、安定市場の構築を求める貨幣・信用制度改革論である。19世紀初頭の英国で誕生し合衆国や西ヨーロッパへと国際的に波及した。本研究は一次史料の精査を通じてこの波及過程を明らかにしている。労働証券論は、単一の学説ではなく、各国各地域に受容される過程で証券が有する機能や意味を変容させてきた。そして、労働証券をめぐる論争を通じて貨幣と市場の理解を深めていったことが分かったのである。 学術単著『労働証券論の歴史的位相:貨幣と市場をめぐるヴィジョン』(日本評論社、2013年)が参照されるならば本研究のあらましが理解されるだろう。
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