研究課題/領域番号 |
23730206
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大塚 雄太 名古屋大学, 高等研究院(経), 特任助教 (70547439)
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キーワード | ガルヴェ / 古典主義 / ロマン主義 / 啓蒙絶対主義 / フリードリヒ大王 / ドイツ啓蒙思想 / フランス啓蒙思想 |
研究概要 |
24年度はガルヴェ訳『国富論』とオリジナルとの比較対照分析を進めるとともに、当初の見通しを若干拡大し、ドイツ近代思想の全体動向を把握することに努めた。第一に、フリードリヒ大王の道徳哲学に焦点を当て、親政の思想的基礎を明らかにしつつ、時代状況との緊張関係に基づきその変容過程を分析した。フリードリヒはフランス啓蒙思想から強い影響を受けていたが、必ずしもその内実については十分に明らかにされておらず、現在の思想史研究でもほとんど扱われていない。したがって本研究では、フランス唯物論者の諸思想、とりわけエルヴェシウスとの比較検討を試みた。この作業により、イギリスおよびフランス啓蒙思想の近代ドイツへの流入という本研究課題の重要論点がさらに深化しつつある。フリードリヒの思想史上の位置づけについても、研究報告を通じ問題提起してきた。また、ドイツ啓蒙からロマン主義に至る思想潮流を把握するにあたって、フランス革命への応答を吟味することは不可避であるが、この点につきガルヴェに関係する人物たちの著作を中心に分析した。革命以降に出版された『国富論』の独訳を扱うにあたり、その歴史的・社会的意義の解明のためには、18世紀末から19世紀にかけての人文・社会科学全体の思想動向の把握は必須であり、これを基礎として、ガルヴェの思想史的意義を確定しうるとも考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『国富論』独訳分析は引き続き比較対照表を作成しており、順調に進展している。ガルヴェの思想史上の位置を確定するに際し、当初設定した視野を若干拡大しており、24年度はそのカバーに予想外の時間を費やしたが十分な収穫があった。とりわけ研究会報告を通じて異分野研究者からの多くのコメントが得られたことで、研究の方向性はむしろ当初よりも明確化・具体化している。ガルヴェの社会・経済思想分析のために必要となる予備的考察の着実な進展によって、23年度の積み残しが解消された。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であるので、これまでの蓄積を総合するとともに、それを論文として逐次公表する。また、国内で不足する研究資料のさらなる収集によって『国富論』ドイツ語訳の経済思想史的意義を確定するとともに、とりわけ海外での研究期間に研究発表を積極的に行う予定である。ドイツ・ハレ=ヴィッテンベルク大学において、資料収集および研究交流の十分な機会がすでに用意されている。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度は外国での調査を実施することができなかったが、その理由は、国内において、次年度に予定しているドイツでの研究調査のための準備を十分に行ったためである。25年度は、24年度における残余を活用し、ドイツにおいて資料調査を複数回にわたって行うと同時に、これまでに構築した国際的研究ネットワークに基づき、現地研究者との交流を積極的に行う予定である。
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