研究概要 |
本年度(平成23年度)は、本研究の第1年目にあたる年度であった。それゆえ、研究の基礎を固め、方向性を定めることに努めた。すなわち考察時期を第一次大戦以前と以後とに分けたうえで、ピグー財政論の大まかな展開を整理し、各時期の財政に関わる主要問題とピグーの主要な政策提言とを整理した。また内外の先行研究の収集・整理をおこなった。 第一世界大戦以前には当時の社会保障制度(年金・医療保険・失業保険)の財源調達問題が、また大戦以後には膨大な戦時国債を処理する問題が、それぞれ重要になるということは当初から予想されていた。しかし本年度の研究によってピグーが、第一次世界大戦以前には「土地税」と「相続税」の増税を、また大戦以後には(土地税と相続税に加えて)「所得税」の増税と「(臨時的)資本課税」を、それぞれ財源として考えていたことが明確になった。本年度の研究では、ピグーの所得税論と資本課税論についての詳しい考察はおこなえなかったが、土地税と相続税については、ピグー厚生経済学の最初の体系書である『富と厚生』(1912年)の精査によって、大部分は明らかにすることができた。 本研究の第1年目を終えたにすぎない現状では、完全な形での研究成果の公表は時期尚早であり、研究を継続することが必要である。しかし、前述の研究成果の一部は、平成24年5月の経済学史学会全国大会(於小樽商科大学)におけるセッション「ピグー厚生経済学の再検討:『富と厚生』出版百周年」(組織者:本郷亮・山崎聡)の中で、報告される予定である(本郷亮「ピグー厚生経済学とは何か? ―『富と厚生』の形成過程―」)。また同年6月末に公刊予定の邦訳書『ピグー 富と厚生』(本郷亮訳/八木紀一郎監訳, 名古屋大学出版会, 2012)の解題の中でも論及される。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1) 設備備品費として、パソコン SONY VAIO ●(1台×●円)、プリンター EPSON Offirio LP-S120(1台×9,800円)、スキャナー ScanSnap S1500(1台×35,700円)、経済学史関係書籍(200,000円)、が少なくとも必要である。 (2) 消耗品費として、 プリンター用インクトナー(1個×10,000円)、プリンター用紙(2,000円)、が少なくとも必要である。 (3) 国内旅費として、「経済学史学会全国大会」(小樽商科大学)への旅費と、経済学史学会関東部会大会(年2回・開催地未定)への旅費、が少なくとも必要である。 (4) 海外旅費として、European Society for the History of Economic Thought年次大会(ペテルスブルグ・ロシア)への出席(250,000円)、あるいはイギリス・ケンブリッジ大学への調査旅行(250,000円)、を支出する予定である。ただし準備等の事情や必要性の有無によっては次年度に延期する可能性もあり、研究の進展に照らして判断したい。 (5) その他の経費として、英文校正料(1回×60,000円)、切手(3,000円)、複写・製本料(20,000円)、が少なくとも必要である。
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