研究課題/領域番号 |
23730212
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
高見澤 秀幸 一橋大学, 商学研究科, 准教授 (60361854)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 金利 / イールドカーブ / ボラティリティ |
研究概要 |
確率的に変動する二次の条件付きモーメント(ボラティリティ)は、金利のみならず金融時系列データ全般に共通する特徴の一つである。しかし、確率的ボラティリティを金利期間構造モデルに導入した場合、ボラティリティに関する予測力または金利水準に関する記述力が低下するという報告が多数なされている。その原因は、モデルに課した制約に帰せられる。その制約は、無裁定条件を課したときに債券価格やその利回りを金利ファクターの解析的な関数形で導くために必要なものであるが、実データとは整合的でない。本研究では、実データとの整合性を保ちながら確率的ボラティリティのモデル化を試みている。具体的には、金利ファクターの変動過程の共分散行列が、イールドカーブに依存して変動しつつ正定値性を維持するモデルを考えた。このモデルを用いて、現在のイールドカーブの情報が将来の金利ボラティリティの予測にとってどの程度有用であるかを検証した。その結果、イールドカーブを駆動するファクターの1つである傾き(slope)ファクターのボラティリティに対しては、当該モデルは標準的なGARCHモデルよりも高い説明力・予測力を示した。一方、水準(level)ファクターや曲率(curvature)ファクターのボラティリティに対しては、イールドカーブの情報だけで説明・予測するのは困難であることが判明した。これを補うためには、イールドカーブを駆動するファクターとは独立の(よって債券のみからはリスクヘッジのできない)ファクターを導入することが必要となる。この独立なボラティリティ・ファクターの必要性については、従来の研究が指摘するところである。しかし、具体的にどの部分に導入すれば効果的であるかまでは明らかにされていなかった。この点を明らかにしたことは、本研究の貢献である。この成果をまとめた論文を現在海外学術誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
統計学的観点から支持される確率的ボラティリティ・モデルは既に得ているので、後はこれが経済学的観点からも支持されるかを検証していく。検証のための分析スキームは先行研究のサーベイを通じて固まっており、現在データ解析を実行中である。
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今後の研究の推進方策 |
確率的ボラティリティ・モデルを用いることが、より収益性の高い債券ポートフォリオの組成に役立つかを検証する。分析のスキームは固まっており、またデータは既に入手済みであるので、後はデータ解析を実行する。結果をまとめ、論文執筆を平成24年度内に終える予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
未使用額発生の主な理由は、当初予定していた学会やワークショップでの発表とそれに伴う出張を取りやめたことによる。未使用額は、主に平成24年度の成果報告のための旅費や学会参加費、並びに論文投稿費用に使用する。
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