研究課題/領域番号 |
23730215
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
末石 直也 京都大学, 経済学研究科(研究院), 講師 (40596251)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | モデル選択 / 経験尤度法 |
研究概要 |
モーメント制約によって記述される計量モデルのための集中情報量規準 (Focused Information Criterion (FIC)) に関する研究を行った。FICとは特定の興味のあるパラメータ (focus parameter) を正確に推定するために考案された情報量規準であり、パラメトリックモデルについてはClaeskens and Hjort (2003, JASA) (以下、CH (2003)) で理論的枠組みが与えられている。しかし、計量経済学において用いられるモデルは、モーメント制約モデルに代表されるセミパラメトリックが多く、CH (2003) のFICの適用範囲はやや限定的である。 本研究では、経験尤度法を基にして、モーメント制約モデルのFICを導出した。基本的な設定はCH (2003) に倣い、局所的な定式化の誤り (local misspecification) の設定の下で、focus parameterの推定量の漸近分布を導出した。FICは漸近的な平均2乗誤差の推定量として導かれる。候補となっているすべてのモデルについてFICを計算し、FICを最小にするモデルが選択される。 またFICの拡張として、モデル・アベレージング (model averaging) 推定量についても考察した。FICでは単一のモデルを選択し、それに基づき推定するのに対し、モデル・アベレージングでは候補となっているすべてのモデルを用いて、各モデルに基づく推定量の加重和を用いて推定を行う。本研究では、従来、Hjort and Claeskens (2003, JASA)で提案されているアベレージング推定量を考察するとともに、新たに、アベレージング推定量の漸近的な平均2乗誤差を最小にするようなウエイトを用いることを提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要において記載した通り、23年度では、局所的な定式化の誤りのもとでの経験尤度推定量の漸近分布を導出し、モーメント制約モデルのFICを求めた。これにより、交付申請書の23年度の研究計画に記載した内容はすべて達成された。また、同じく研究実績の概要で述べたアベレージング推定量に関しては、研究計画時にはなかった新たな着想に基づいて導出したものであり、その点においては計画していたよりも進展があった。したがって、シミュレーションに関しては若干不十分な点があったものの、総合的に判断すれば、進捗状況は順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
23年度の研究により大まかな理論的な枠組みは完成したが、提案した情報量規準が有限標本でどの程度機能するかを検証するモンテカルロ実験はやや不十分であった。そこで、24年度ではまず、シミュレーションを集中的に行う。 また、23年度では、候補となっているモデルの集合の中に真のモデルが含まれているという仮定のもとで情報量規準が導かれているが、モデルは現実の近似に過ぎず、すべてのモデルの定式化が誤っていることも考えられる。よって、24年度では、そのような仮定を緩めた下での情報量規準の構築方法について考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度中に予定していた研究打ち合わせを1件キャンセルしたために、24年度に若干の繰り越しが生じた。 24年度では、計算に必要なソフトウエアの購入、シミュレーションを大学院生に依頼するための謝金、論文の英文校正費、研究報告のための旅費に研究費の多くを充てる。
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