本研究では、モーメント制約モデルに代表されるセミパラメトリックモデルにおいて、興味のあるパラメータを正確に推定するためのモデル選択の方法を考察した。昨年度に引き続き、経験尤度推定量に基づくモーメント制約モデルの集中情報量規準の研究を進めるとともに、経験尤度推定量を用いたモデル・アベレージング推定量を提案し、特に、漸近的なMSEを最小化するようなアベレージングの方法を考察した。モーメント制約モデルにおけるモデル・アベレージングに関する研究はまだ発展途上の段階にあり、本研究の成果はひとつのアプローチ方法を示すものである。 Sueishi and Yoshimura (2013) では、部分線形モデルと呼ばれるセミパラメトリックモデルのための集中情報量規準を開発した。ノンパラメトリックな関数をシリーズで推定することで、ノンパラメトリック部分のチューニング・パラメータの選択とパラメトリック部分の変数選択を同時に行うことができる方法を提案した。 Sueishi (2013) では、経験尤度推定量と類似する推定量であるexponential tilting (ET) 推定量の性質について考察した。モーメント制約モデルの定式化が誤っている場合、ある種の条件の下で、パラメータの疑似真値が識別できないことを示した。従来、ET推定量は疑似真値の一致推定量であると考えられていたが、ある種の条件の下では、一致性すらないことを示すもので、実用上の注意を喚起する研究である。
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