研究課題/領域番号 |
23730216
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
藪 友良 慶應義塾大学, 商学部, 准教授 (90463819)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 為替介入 / 口先介入 / 後光効果 / 政府高官 / 内生性 / 成功率 / MCMC / ベイズ推定 |
研究概要 |
政府高官による口先介入は、為替レートをコントロールする重要な手段である。実際、日本では介入と口先介入の組み合わせによる、為替のコントロールがなされてきた。本研究では、以下の3点に絞り、日本のおける口先介入の効果を分析した。1) 日本の政府高官に絞って誰がどのような発言をしたのか、2)これらの発言が為替レートへ効果を持っていたか、3)口先介入はどのような状況で効果が高まるか。1991~2003年までのデータを調べたところ、1995年以前は口先介入が少なかったこと、1995年以降は口先介入が増えていたことが確認された。また、過去の介入で成功率が高かった財務官なら、口先介入の効果も高いことが確認された。これは後光効果(Halo effect)と考えられよう。以上の結果から、介入を行う際は成功率を高めることで、効果的な口先介入を行うことができるといえる。 日本銀行金融研究所アーカイブに非公開文書として所蔵されていた、1920年代の介入額を日次で記録した帳簿は、2005年にようやく公開された。そこで本研究では、この新しく公開された日次介入データのデータベースの整備を行った。このデータを分析する最大の利点として、為替レートの変化と介入との間に内生性の問題がないことが挙げられる。当時の資料から、介入の意思決定には1日以上を要しており、通貨当局は為替レートの変化に素早く反応できていなかったことが窺える。したがって、日次データを用いれば、為替レートの変化と介入の間にある内生性を気にする必要がない。今後は、このデータベースを分析していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1991~2003年における政府高官の発言内容をデータベース化することができた。また、1920年代の日次の為替レートと介入額についてもデータベース化ができた。現在は、これらのデータを分析しており、主要な結果が徐々にではあるが明らかになってきている。
|
今後の研究の推進方策 |
Chen, Watanabe, and Yabu(研究代表者)(2009)によって提案された、マルコフ連鎖・モンテカルロ法(MCMC)を用いた介入効果の推定法を改良する。彼らは時間当たりの介入額を推計する際、時間当たりの介入額の和が公表されている日次の介入額と一致するという情報を利用している。しかし、推計精度を高めるには、同日のうちに、円売り介入と円買い介入が行われないという符合制約も課すべきと考えられる。本研究は、こうした推計上の問題を改善することで、より高い精度で、介入効果を推定する方法を提案する。 口先介入と1920年代の介入については、データ整備のめどがたった。今後はこれらのデータ分析を進め、論文執筆や学会報告を積極的に行っていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
この残金で必要なものが買えなかったため、翌年の支出にまわしたい。
|