研究課題/領域番号 |
23730216
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
藪 友良 慶應義塾大学, 商学部, 准教授 (90463819)
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キーワード | 為替介入 / 非不胎化 / MCMC / ベイズ推定 |
研究概要 |
日本銀行アーカイブに所蔵されていた、1920年代の介入額を記録した帳簿をもとに、日次の介入データの整備を行った。当時の資料から、介入の意思決定には1日以上を要しており、通貨当局は為替レートの変化に素早く反応できていなかった。したがって、当時の日次データを分析する限り、内生性の問題は生じない。このデータを分析したところ、介入は為替レートのボラティリティを減少させる有意な効果が観察された。しかし、当日の介入は、当日ではなく翌日のボラティリティだけを減少させていた。その理由として、当時は通信網が現代に比べ発達しておらず、介入のニュースが市場に広まるのに時間がかかった可能性が考えられる。 Watanabe and Yabu(研究代表者)(2013)は、量的緩和時の介入を分析し、介入資金の40%はオフセットされて市場に滞留していたことを指摘している。また、非不胎化介入の方が、不胎化介入よりも、為替への効果が大きいとした。ただし、彼らの研究は、内生性の問題を考慮していない。本研究では、彼らの分析を、2つの方向で拡張する。第一に、期間を延長して2010年以降の介入を含めた分析を行う。第二に、Chen, Watanabe, and Yabu(研究代表者) (2012)で提唱されたMCMC法を用いて内生性の問題を除去する。その結果として、最近の介入(2010~11年)はほぼ100%が非不胎化されていたこと、非不胎化介入の方が為替への効果が有意に大きかったこと、が分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1920年代の日次の為替レートと介入額についてデータベース化が終わり、その分析結果を論文としてまとめた。また、新たに非不胎化介入の効果を分析し、主要な結果がほぼ明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
介入の為替への効果は、時間を通じて一定ではなく、時期によって異なった効果があると考えられる。よって、分析期間を分割して、介入の効果を別々に分析する。先行研究では、1991~95年において、介入の効果は理論と有意に逆になっている。この原因は、内生性と考えられるため、Chen, Watanabe, and Yabu (2012)によって提案されたMCMC法を用いて介入効果を推定する。ただし、この期間において、為替は強い円高トレンドを持っており、モデルの中でトレンドを明示的に考慮する必要があるかもしれない。今後はデータ分析を進め、論文執筆や学会報告を積極的に行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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