研究課題/領域番号 |
23730218
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
浅井 学 創価大学, 経済学部, 教授 (90319484)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 実現共分散 / 動的相関係数行列 / 非対称 |
研究概要 |
この研究の主目的は、実現共分散(5分次データなどから計算される日次の共分散行列の推定値)を使って、そのダイナミックな動きを説明するモデルを考案し、金融資産の数量的リスクの予測のパフォーマンスの向上に役立てることである。 平成23年度前半では、まず実現共分散の推定と既存の研究の整理を行った。また、相関係数行列のモデル化について、Engle/Shephard/Sheppard (2008)やAsai/McAleer (2009)およびAsai/So (2010)を参考に様々な方法を比較検討した。この成果の一部は、新たな非対称GARCHモデルに関する研究に活かされた。 さらに、実現共分散の代理変数として、レンジ(最大値と最小値の差)のデータを使って予備的な分析を行ったところ、実現共分散の場合でも使えるようなヒントが得られた。特に、相関係数の構造をモデル化する際に、どのように非対称性と長期記憶性を取り入れるかが課題であった。非対称性に関しては、エルミート多項式による近似を、多変量に拡張できたことが大きな成果である。また、長期記憶関数に関しては、Corsi (2009)のHARモデルの発想を組み込むことができた。この内容は、レンジのデータを使った相関係数モデルの研究として、論文にまとめることができた。 平成23年度後半には、Hansen et al. (2010)のRealized GARCHモデルを多変量に拡張して、Realized DCCモデルを考案した。特に、長期記憶性について、より一般的な形として、相関係数行列の分数和分過程を考案することができた。さらに、予測のパフォーマンスを評価する際のベンチマークとして、Corsi (2009)のHARモデルの多変量版を考案した。現在、新たに考案したRealized DCCモデルについて、モンテカルロ実験を行っている途中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新たなアイデアにより、当初計画よりも急速な進展があった。具体的には、実現共分散の代理変数として、レンジ(最大値と最小値の差)のデータを使って予備的な分析を行ったところ、実現共分散の場合でも使えるようなヒントが得られた。現時点では、半年間ほど前倒しで進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果をもとに、実証分析を行っていく。米国株価から5つほど銘柄を選び、5分次データを用いて実現共分散を計算する。新たに考案したモデルを使って、その有用性を示していく。予期せぬ問題から若干のモデルの修正があるかもしれないが、適宜、、解決していく。最後に、研究成果を論文にまとめ、学術誌に投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用予定は0円である。
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