研究課題
本研究の最終年度の成果としては、大きく2つ挙げられる。第一には、どの共和分検定が非線形調整や構造変化を持つ共和分関係を見つける際に有効であるかを検証した。標準的な共和分検定は、共和分関係が非線形調整や構造変化を持つ際に、低い検出力となることが知られている。しかし、非線形調整や構造変化を持つ共和分検定の間では、どの検定が最も望ましい検出力を持つのか明らかにされていなかった。モンテカルロシミュレーションの結果は、閾値自己回帰型の調整を持つ共和分検定が、ほとんどの共和分関係に対して高い検出力を持つことを示した。この結果は、応用分析においても確かめられた。第二には、未知の構造変化の数を持つ共和分検定を提案した。提案した検定は、事前に決められた最大の構造変化数より小さいか等しい構造変化の数を持つ。分析の結果、従来用いられてきた決められた構造変化の数を持つ共和分検定よりも、高い検出力を持つことが明らかとなった。さらに、GARCHタイプのボラティリティを持つときにおいても、適切に検定できることが示された。アメリカの貨幣需要への応用分析においては、提案された検定が他の検定より多く共和分関係を得た。本研究期間全体を通しては、まず、ボラティリティがGARCHや分散の構造変化であるときに、多くの共和分検定が共和分なしの帰無仮説を過剰に棄却することを明らかにした。一方で、分散比を用いた共和分検定は、不均一分散のほとんどの場合において、帰無仮説を過剰棄却しないことが明らかとなった。また、上記に述べられているように、非線形調整や構造変化を持つ検定の特性も示された。これらの分析から、様々なタイプのボラティリティや内生性が存在するときに起こる共和分検定の問題点を示した上で、どのような検定が有効であるかを明らかにした。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Empirical Economics
巻: 未定 ページ: 未定
10.1007/s00181-012-0605-1
Economic Modelling
巻: Vol. 29, Issue 5 ページ: 2011-2015
doi:10.1016/j.econmod.2012.04.022