1 ラトビア国では、旧ソ連邦からの独立以降ビーバーの毛皮の経済性が低下したことからビーバーの捕獲が進まなくなり、大幅な個体数の増加が起きている。そのため、ビーバーの過少利用問題が深刻化している。そこで、この問題に取り組む際の基礎データとして資するように、経年的なビーバーの生態学的データを用いて、ビーバーの増殖率の上限を推定した。 2 漁業資源の利用が、新たな漁具の出現によってどの程度の影響を受けるかを、日本海のトラフグ資源を事例として分析した。漁業データは精度が低いという難点があることや、新たな漁具の普及に関するデータが乏しいことから、ベイズ統計学の知見を用いて推定をおこなった。その結果、1990年~2006年の平均漁業収入は、持続的な漁業をした場合よりも33%少ないという結果が得られた。 3 過少利用の下で発生している有蹄類の個体数増加への対処法の一つに、捕食者の再導入がある。わが国においても、増加傾向にあるニホンジカの個体数調整方法として、ハイイロオオカミを再導入する案が出されている。そこで、これまでに出された議論や、ハイイロオオカミに関する文献をレビューし、日本における再導入の現実性を検討した。現状は、ハイイロオオカミによる死亡リスクがゼロであることから再導入は困難であるものの、オオカミについての知識の蓄積や再導入によるメリットの認識、議論の積み重ねの下で、将来的には再導入が甘受される可能性があると考えらえる。
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