研究課題/領域番号 |
23730223
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
岩田 和之 高崎経済大学, 地域政策学部, 講師 (90590042)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | コンパクトシティ |
研究概要 |
本年度はコンパクトシティの効果を定量的に把握するための準備作業として、より詳細な複数時点における日本全国約1700自治体に関する都市情報データベースの作成を行った。特に、平成の大合併と言われる自治体合併によって、異時点間で自治体総数が大きく異なっている。そのため、合併前と後との都市情報を保持しつつ、両者の関係を結びつけるファクターを導入したデータベースを構築した。データベースの構築にあたっては、広島市の都市計画担当者等にヒアリングを行い、保持すべき情報の取捨選択を行なっている。構築したデータベースにおいては、他の研究では見られない都市要素として環境(二酸化炭素排出量)、都市計画税・固定資産税などの都市の社会制度の情報も加えている。都市の環境側面に関する情報としては、環境自治体白書のデータベースを用い、都市計画税については都市計画現況調査より、固定資産税については総務省への照会によってデータを入手している。これらの作業を行うことで、平成23年度の時間の多くはデータベース構築に充てている。ただし、完全なデータベースの構築前に、簡単な都市規模と都市環境(一人当たり二酸化炭素排出量)との関係性を1990年、99年、03年、07年の4年分のデータを用いて分析したところ、都市密度が高い自治体ほど環境負荷が少ないことが明らかとなった。このことは、2011年8月の東北大で開催された研究会で報告を行うと共に、以下の研究雑誌に掲載されている。岩田和之・馬奈木俊介(2011)「コンパクトシティは環境改善に繋がるか?:全国市区町村データを用いた実証分析」、環境科学会誌、Vol.24(4)、pp.390-396.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の目標としては、研究テーマであるコンパクトシティの効果を定量的に把握するためのデータベースの構築完了および途中段階での研究報告であった。したがって、研究実績の概要でも述べたように、分析に用いるデータベースの構築は概ね完了している。また、途中段階の研究成果も査読付き研究雑誌に掲載されていることから、本年度の目標は概ね達成できていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究の進め方・方針については、23年度に整備したデータベースの分析作業が主たる作業となる。基本的には、4年分の日本国内全自治体のデータを利用し、都市計画に関する政策が、都市の環境(二酸化炭素排出量)、財政指標、交通事故件数、廃棄物排出量、災害被害などにどのように影響を与えているのかを多重回帰分析を用いて検証していく。都市計画に関する政策としては、市街化区域・市街化調整区域の設定、都市計画税の設定、固定資産税の設定の3種類を取り上げ、これらが都市の規模にどのように影響を与え、そしてその都市の規模が先の都市環境等にどのような影響を与えているのかを定量的に明らかにする。分析が完了した後に、論文の執筆にとりかかり、年度内に英文研究雑誌に投稿することを目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度については、国内での学会参加を積極的に行い、本研究テーマに関連した先端の研究情報の収集に努め、より精度の高い分析を行うことができるように試みる。また、自治体の政策と災害被害との関係を分析したものとして、国際学会(EAERE: European Association of Environmental and Resource Economics)で報告をすることを予定している(現在審査中)。そのため、旅費について多くの予算を振り分ける。また、学会や研究会等で指摘されたことを反映するために、データ作業が必要になることも十分に予想されることから、それらの作業に当たるアルバイトを雇う人件費も必要である。そして、23年度に購入しきれなかった、あるいは24年度になり新たに必要となることが判明した参考文献や参考書籍を購入するための物品費についても計上するとともに、研究協力者との意思疎通を図るための通信費や郵送費、英文雑誌投稿に向けた英文校閲費および投稿費などのその他費用についてもある程度が必要となる。
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