研究課題/領域番号 |
23730225
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福川 信也 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00433409)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | イノベーション / 中小企業 / 公設試 / 技術移転 |
研究概要 |
日本において地域イノベーションシステムの分析を行う際に大学と同様に注目しなければならない知識源泉は、公設試験研究機関(以下、公設試)である。公設試は地方自治体によって運営され、地域の中小企業に対する技術支援、独自の研究、中小企業間の技術連携支援という三つの役割を担っている。その歴史は19世紀後半にまで遡り、カバーする技術領域は、農林水産業、製造業、保健衛生、環境科学、土木建築、デザイン、伝統工芸など多岐にわたる。各地方自治体には最低1箇所の製造業系公設試が設置されている。公設試はその設立目的からして、ローカライズされたスピルオーバー(地域中小企業への技術知識の移転)を目的としている。公設試から地域中小企業へのスピルオーバーの径路は技術相談、新技術研修、試験分析、共同研究、特許ライセンス、論文など多岐にわたる。本研究は、公設試の技術移転について包括的なデータセットを用いて、定量的なアプローチから分析する初めての試みである。公設試はその歴史、施設の数、カバーする技術分野の多様性、立地範囲の面から見て、世界に類を見ない充実した地域イノベーション政策である。従って、公設試の技術移転効果を定量的に評価することは、より効率的な地域イノベーション政策を設計する上でも重要である。現時点での進捗状況と今後の方針については次項以降を、当該年度のより詳細な研究実績リストについては申請者ホームページ(http://sites.google.com/site/nfukugawa/)を参照されたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では、産総研編「公設試験研究機関現況」(以下「現況」)データによる公設試パネルデータの構築に着手した。この段階での経費は、紙媒体データの購入または複写、CD-ROMデータの購入、質問紙調査、データの入力、瑕疵チェック、加工、編集などを作業者に委託するために支出された。主な費目は謝金(調査実施、データ加工、瑕疵チェック)、旅費(聞き取り調査、学会報告)、設備備品費(CD-ROMデータベース)、その他(複写費、通信費)である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、「現況」データ分析に加え、中小企業(公設試の技術移転メニューを活用した企業、活用しない企業をともに含む)の個票パネルデータを質問紙調査にもとづいて構築する。これにより、ヘックマンのセレクションモデルやトリートメント回帰モデルなど計量経済学的プログラム評価の手法により公設試の技術移転の成果(企業の労働生産性向上への貢献)を定量的に分析することが可能になる。
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次年度の研究費の使用計画 |
この段階での経費は、中間成果物の国際学会報告、紙媒体データの購入または複写、CD-ROMデータの購入、質問紙調査、データの入力、瑕疵チェック、加工、編集などを作業者に委託するために支出される。2011年度は以下のやむを得ない理由で予定額を消化できなかった。震災後、予算配分計画変更の可能性が告知され、当初参加予定だった国際学会をすべてキャンセルした。予算が予定通り支給されることが判明した段階においては、大部分の国際学会で論文提出期限を過ぎていた。未使用分は2012年度の国際学会参加関連費用に充当される予定である。
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