研究課題/領域番号 |
23730226
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
中村 靖彦 群馬大学, 社会情報学部, 講師 (90453977)
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キーワード | 水平的企業間合併 / 国際寡占市場 / 理論経済学 / 応用経済学 / 経済政策 |
研究概要 |
2012年度においては,「国際寡占市場の企業間合併の研究」に従事するとともに,さらなる研究の進展を見据えて,寡占市場に関する企業の行動に影響を与えるさまざまな要因に関して理論的分析を行った.例えば,前年度より進めていた,「企業側と組合側の交渉の末に締結される労働賃金契約が国内寡占市場における企業間合併に与える影響に関する研究」に関する論文について,国際査読付雑誌への掲載を勝ち取り,また,新たに「政治的便益」の観点から,「望ましい賃金契約の形態はどのようなものであるか」に注目した研究に着手し完成させた.この研究は『リーディングス政治経済学への数理的アプローチ』(出版:勁草書房)というモノグラフの第1章を飾る論考として公刊された.この研究においては,国内寡占市場を構成する企業が同時にあるいは逐次的に数量を設定し,かつ組合側との賃金交渉が産業レベルでの大きな組合と個別企業レベルの小さな組合と交渉する際にどちらが「政治的便益」を改善するのかについて考察を行った.ここでの「政治的便益」とは,消費者の便益である「消費者余剰」,企業の便益である「生産者余剰」,および「労働組合の効用」を適宜重み付けしたものとして定義されるものである.先行研究においては,企業側と組合側が賃金交渉に臨む際の交渉力が,各々対称であると仮定されたが,本研究においては,非対称な場合も考慮の対象に入れられた.結果としては,政治的に好ましい賃金交渉の構造は,国内および外国住民の企業の持ち株比率の大きさに依存することが示されるが,さらに,賃金交渉における企業側と労働者側の間の相対的な交渉力の大きさにも決定的に依存することが確認された.この方向性の研究は,必ず「国際寡占市場における企業間合併の研究」に応用可能であり,最終年度の研究へとつながるものと確信する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2012年度においては,国際寡占市場における企業間合併の理論に関する論文に関しては,国際査読付き雑誌への掲載を勝ち取ることはできなかったが,国際的企業間合併を分析する上での基礎理論に関しては,多くの研究を国際査読付き雑誌に交換することが出来た.その意味で本研究を遂行するための土台はすべてと完成したと考えている.したがって,2011年度と同様に,本研究は「おおむね順調に進んでいる」と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
2013年度においては,国際寡占市場における企業間合併の論文の国際査読付き雑誌への投稿および掲載を勝ち取ることを目指す所存である.この研究については既に完成しいくつかの国際査読付き雑誌への投稿を続けているが,依然として掲載が勝ち取れない状況にある.早期に掲載を勝ち取るべく,改訂・投稿のプロセスを進める所存である. また,国際的な企業間合併を分析するための基礎的な研究(例えば,国内寡占市場の企業間合併については,協力ゲームの方法論を用いて,経営委任契約や労働契約の影響を分析した論文として,既に国際査読付雑誌に公刊した)は既に出そろっているといえる.そこで次なる研究としては,国際寡占市場での企業間合併に対して,各企業内の労働契約がどのような影響を与えるかについて探究する所存であり,それをもって最終年度の「企業間合併に関する研究」を締めくくりたいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は,当初の予定では2011年度ならびに2012年度の2か年で終了する予定であり,当初の終了年次である2012年度には,2011年度より継続して行ってきた,非協力ゲームアプローチによる,企業の所有と経営の分離を考慮した上での国際的な水平的企業間合併に関する経済理論的論文を完成させ,かつ国際査読付き学術雑誌の掲載を勝ち取る予定であった.しかしながら,論文内での分析をより良いものにするための工夫に時間がかかったことにより,完成が遅れてしまい雑誌への投稿が遅れてしまった.また,その後投稿した当初の投稿先から不受理の通達を受けたことにより,さらに論文の公表が遅れてしまった.その際,「論文の貢献部分を強調できるような書き方へと変更せよ」という指示を受け,改訂を続けたのち,他の国際査読付き雑誌へと投稿したが,いまだに国際査読付き雑誌への掲載を勝ち取れていない状況にある.現在は,掲載を勝ち取るため抜本的に内容を改訂中であり,投稿前に英文校正を受ける必要がある.そこで,2013年度に繰り越していただいた残額の一部は上記論文の英文校正費に充てることとしたいと考えている. また,本研究においては,理論モデルにおいて多数の変数をパラメーターとして扱う必要があるため,高度な解析を遂行可能なソフトウェアが必要不可欠である.そこで,2013年度においては,Mathematica等の高度な解析を可能にするコンピューター・ソフトウェアの購入に使用させていただきたいと考えている.
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