本研究は、タイの靴産業を事例に、グローバル化時代のインフォーマル経済に注目しながら、バリューチェーン分析を、経済的側面、制度・社会的側面の両方から実証的に行うことが目的である。アジア域内の再編と連動して、靴産業の再編は大きく進んでいた。第1に、大手資本の対応戦略をみると、一方で産業高度化に取り組みつつも、他方では安価な労働力を求めて生産拠点の「移転」を進めている。第2に、国際化が進んできた零細資本に関しては、移転や廃業、インフォーマル化が対応戦略の中心であり、第3に、インフォーマル・フォーマル部門の接近と競争の激化が見られること、第4に、産業の高度化が制約を受けていることが明らかになった。
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