研究課題/領域番号 |
23730229
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
中嶋 亮 横浜国立大学, 国際社会科学研究科, 准教授 (70431658)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ネットワーク分析 |
研究概要 |
本年度の研究では、社会的相互作用のモデルのうち、交友関係選択を記述する行動方程式をマッチング・ゲームモデルから、ネットワーク・ゲームモデルに拡張することを試みた。マッチング・ゲームモデルとネットワーク・ゲームモデルのいずれの場合についても交友関係の均衡は対安定性条件で定義されるが、ネットワークゲームの場合には、複数均衡が発生することが想定される。その複数均衡がモデルのパラメータの識別性にどのような影響を与えるかについてネットワーク分析の専門家であるエックス=マルセーユ数量経済研究グループ所属の花木伸行教授と議論した結果、複数均衡が発生するための十分条件を発見することができた。このネットワーク上のマッチングモデルを実証的に分析する際に必要となるアルゴリズム的な複数均衡の選択ルールについては現段階では検討中であるものの、ネットワーク上のマッチング理論モデルを犯罪行為の社会的相互作用モデルをミクロデータで実証するための実証モデルを構築するための準備を整えることはできたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は分析のツールとなるネットワーク上のマッチングモデルの理論分析を行うのと同時に、本分析で使用するAdd Health データを入手し、その基本的な分析を行う予定であった。前者については、前述の通り、順調に研究がすすんだものの、後者のデータ入手に関しては、データ供給下の使用承諾を得るための申請手続きが、データの適正な使用を審査する倫理審査委員会のレビュー手続きがおくれたため、データ使用契約を結ぶための事務作業が進行中となってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
24年度の早い段階で、Add Health データの利用申請の手続きを完了させ、マッチング・ゲームモデルを交友関係選択モデルとする犯罪行為の社会的相互作用モデルの構築を行う。その際、23年度の理論分析の成果を取り入れながら、主体間の行動のピア効果に基づく強い相関関係をあらわすのパラメータの統計的推測を行うための系侶経済モデルを開発する。この場合には、個人の意志決定確率を独立に取り扱うのではなく、交友グループの意志決定全体の同時確率にもとづいて分析を行うことが必要になる。したがって、パラメータの推定には、極めて次元の高い多重積分問題を解くことになる。その積分問題を特にあたりマルコフチェーン・モンテカルロ法などを援用した計算機集約的な手法を用いることを考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は、モデルの構造パラメータの推定および政策シミュレーションの過程で大量の時間・空間的計算量を確保しなくてはならない。そのために本年度はワークステーションの購入を計画している。さらに、推定モデルの政策的なインプリケーションを考察するために和書、洋書の関連書籍の購入をおこなう。最後に、この分野の研究の最新の知見を得るために学会および研究会に参加することを計画しており、そのための旅費支出を行う。
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