平成23年度の研究では、社会的相互作用のモデルのうち、交友関係の選択に関する行動方程式を片側マッチング・ゲームモデルとして記述し交友関係の均衡として成立する安定性条件が成立する十分条件を発見した。 平成24年度前半は実証マッチング・ゲームモデルの手法を援用し、若者の交友関係選択を記述する実証行動モデルの構築を行った。特に非移転可能な両側マッチングの構造推定手法に着目し、均衡データからマッチングの効用関数を推定する手法を開発した。 平成24年度後半は、片側マッチングによるグループ形成の分析結果を所与として、グループの形成という自己選択の問題をコントロールし、若者の非行行為を発生させる因果関係とその行為の波及過程を計測する構造モデルの構築に取り組んだ。 平成25年度は前年度までの研究成果のとりまとめを行った。まず、マッチングを介して知識が伝播する速度と範囲をミクロデータから厳密に計測した。この研究成果は学会誌に投稿され受理されている。さらに両側および片側マッチング・ゲームモデルの構造パラメータ推定の新しい手法についてモノグラフとしてまとめた。従来のマッチングの構造推定手法両側マッチングの問題にのみ適用されることが常であったが、本研究で解明する非行グループの形成過程は片側マッチングであるため、マッチングの均衡(安定性)概念には修正が必要である。モノグラフでは片側マッチングの場合であっても従来の実証推定手法を改良することで適用可能であることを示した。最後に片側マッチングの構造推定の手法を喫煙者グループの若者集団の形成における顕示選好分析に応用した。選好パラメータの推定結果はモデルの定式化に対して頑強ではなかったので、モデルの選好の仮定を緩めることで再推定を試みた。現在、その研究成果は学会投稿論文としてとりまとめており、完成次第、学会誌に投稿する予定である。
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