研究課題/領域番号 |
23730232
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
蔡 大鵬 名古屋大学, 高等研究院, 特任准教授 (20402381)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 環境保全 / 環境政策 / 横断条件 / 無限期間動的計画問題 / 開放経済 / 国際的協調枠組み / 地球環境資源 / 枯渇性資源 |
研究概要 |
本研究の目的は、「割引かない無限期間動的計画問題の最適解の構築」(Cai and Nitta 2009, 2010)の理論を、地球環境資源の最適利用問題に応用し、将来の世代へと良好な自然環境を引き継ぐ環境保全義務を達成できる経済政策および国際的協調枠組みのあるべき姿を提示することである。 平成23年度において、現在までの知見を踏まえながら、申請者のこれまでの研究成果をさらに掘り下げ、一般性を持つ割引かない無限期間動的計画問題の最適解を構築するアプローチの確立、および横断条件を含む最適解の諸性質の解明を目指して、研究を進めてきた。その成果を、学術論文"Transversality Conditions for Stochastic Higher-Order Optimality: Continuous and Discrete Time Problems (with NITTA Takashi)"としてまとめ、学術雑誌に投稿したとともに、ワーキングペーパー(arXiv:1203.3869)として公開した。 一方、交渉ゲームの分析手法を取り入れ、「開放経済における地球環境資源の利用における国際的協調枠組みのあり方」を取り扱う理論モデルを構築することも本課題の目的の一つである。平成23年度には、企業と政府間の利得調整プロセスを明示的に分析した論文"Subsidization and Bargaining in Mixed Oligopolies (with LI Jie)" をBulletin of Economic Researchに採択された。この論文で用いたアプローチを、国家間の利得調整のプロセスに応用することにより、国際的協調枠組みが地球環境資源の利用・保全に及ぼす影響を明らかにすることが可能になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、23年度において、以下の研究を進める予定となっている。1.Cai and Nitta (2009, 2010)について、以下の拡張を行う予定である:(1)不確実性を含む形まで拡張する。(2)無限計画期間下の最適解になるための必要条件から、目的関数や生産関数に関する十分条件を見出す。これにより、有限計画期間の最適解を明示的に求める必要をなくす。さらに、厳密な数学解析により、Kamishigashi(2001)、Okumura, Cai and Nitta(2009a, b)など横断条件に関する従来の研究をさらに不確実性を含む形に拡張する。これについて、学術論文"Transversality Conditions for Stochastic Higher-Order Optimality: Continuous and Discrete Time Problems (with NITTA Takashi)"としてまとめ、学術雑誌に投稿したとともに、ワーキングペーパー(arXiv:1203.3869)として公開した。2. 交渉ゲームの分析手法を用いて、環境保全に関する国際的協調枠組みの内生的決定プロセスについて研究する予定である。これに関連して、"North-South Negotiations on Emissions Reductions: A Bargaining Approach"(with J. Li)を修正し、学術雑誌に投稿した。また、企業と政府間の利得調整プロセスを明示的に分析した論文"Subsidization and Bargaining in Mixed Oligopolies (with LI Jie)" を修正、再投稿し、Bulletin of Economic Researchに採択された。
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今後の研究の推進方策 |
今後では、最新の文献を検討するとともに、研究の精度を向上させつつ、以下の研究を進める。得られた成果は、論文にまとめ、国内外の学会・研究会で報告するとともに、環境経済や理論経済の国際学術雑誌に投稿する。 1. 改良した「割引かない無限期間動的計画問題の最適解を構築するアプローチ」を地球環境資源の最適利用問題に応用し、《世代間衡平性》の公理と《パレート効率性》を同時に満足する最適経路を提示する。また、Chichilnisky 基準(Chichilnisky, 1996)との結論と比較し、世代間衡平性が持つ本質的なインプリケーションを理解する。 2. Okumura and Cai (2007, 2010)等の開放経済における環境資源の最適利用に関する研究成果のベースに、地球環境問題における不確実性に着目しながら、上記の研究成果をさらに不確実性を含む形に拡張する。将来世代に対する「環境保全義務」の達成を前提とした「不確実性を考慮した開放経済における地球環境資源の最適利用問題」を取り扱う理論モデルを構築・分析し、経済の開放に伴うインプリケーションについて理解する。 3. 以上の研究成果に基づき、地球環境問題の解決に必要とされる国際的取り組みついて検討する。その際、コモン・エージェンシー・ゲームやバーゲンニング・ゲーム等の交渉ゲームを適用する。2国モデルを想定した、「開放経済における地球環境資源の利用における国際的協調枠組みのあり方」を取り扱う理論モデルを構築し、政策枠組みの内生的決定プロセスを解明する。 4. 本研究の総括作業として、上記で得られるであろう理論的成果をもとに、地球環境資源の最適利用のあるべき姿および必要な国際的協調枠組みのあるべき姿について政策提言を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度では、下記の項目において、研究費を使用する予定である。 (1) 海外内の各種学会・研究会での報告に関する旅費。具体的には、Scottish Economic Society Annual Conference(イギリス)およびAsia Meeting of the Econometric Society(インド)等の国際会議において、関連論文を発表する予定である。 (2) 研究者の招へいに関わる謝金および諸費用。具体的には、共同研究者を2週間程度で招へいし、本研究課題に関連する共同研究の打ち合わせを行う予定である。
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