研究課題
国際貿易は経済成長を促進するのかあるいは阻害するのか.これまで多くの理論研究および実証研究が蓄積されてきた.本研究では,2国・2財・2要素の規模効果のない半内生的成長モデルを用いて,閉鎖経済から開放経済への移行に伴い,2国間の1人当たり所得の成長率格差が拡大するにか,あるいは縮小するのかを分析した.ここで,2国とは自国と外国のことを,2財とは工業製品と農産物のことをし,2要素とは労働と資本ストックのことをそれぞれ意味する.研究期間は2年間である.前年度は,両国の人口成長率が等しい場合を分析し,その成果を論文としてまとめ,国際ジャーナルに掲載した(Sasaki, 2011)).この最終年度は,両国の人口成長率が異なる場合を分析し,ディスカッションペーパーとしてまとめた(Sasaki, 2012).この論文を国際ジャーナルに投稿し,現在はレフェリー・コメントに基づき改訂中である.この研究からは以下の結果が得られた.自国の人口成長率が外国の人口成長率より高いとき,長期的には,自国が両財を生産し,外国が農業に完全特化するという貿易パターンのみが持続可能となる.閉鎖経済においては,自国の成長率は外国の成長率より高いが,自由貿易においては,両国の成長率は等しくなる.つまり,閉鎖経済から自由貿易へ移行すると,成長率が均等化する.自国の人口成長率が外国の人口成長率より低いとき,長期的には,自国が工業に完全特化し,外国が農業に完全特化するという貿易パターンのみが持続可能となる.閉鎖経済においては,自国の成長率は外国の成長率より低いが,自由貿易においては,自国の成長率は外国の成長率より高くなる.つまり,閉鎖経済から自由貿易へ移行すると,成長率が逆転する.このように,本研究の成果は国際貿易と経済発展の関係に関する理論分析に大きく貢献することが可能である.
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Kyoto University, Graduate School of Economics Research Project Center Discussion Paper Series
巻: No. E-12-006 ページ: 1-24