研究概要 |
親からの遺産が子の就業に与える影響についての実証研究を行った。 1.データ:日本大学「健康と生活に関する調査」の個票パネルデータを使用する。65歳以上の男女を対象としたnational representative sample(N=4,640)である。調査回答者本人の生存する全ての子に関して、就業有無・就業形態、および、基礎的情報(年齢・性別・教育・婚姻状態・同別居の形態など)が利用可能である。また、調査回答者本人について、住宅の種類(持家・賃貸など)・住宅の敷地の広さ、が尋ねられており、これら2つの変数を、親から子への期待される遺産額の大きさの代理変数として利用した。また、大阪大学「くらしの好みと満足度調査」の個票パネルデータを使用した。この調査では、回答者に対して、将来的に遺産が受取れるかどうかの期待、および、遺産を実際に受け取ったかどうかが尋ねられており、直接、親からの遺産期待や遺産受取が回答者の就業状況に与える影響が分析可能である。 2.分析:親からの遺産が、子の就業有無、もしくは、就業形態に影響を与えているかどうかを実証的に分析した。 3.結果:親と別居をしている長子の期待就業確率が、親の住居の種類によって異なるかどうかを検討した。結果として、親の住居が持ち家である別居の長子のほうが、親の住居が賃貸である別居の長子よりも、就業をしていない傾向が示された。今後は他子について同様の検証を行う。
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