研究課題/領域番号 |
23730239
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
小松 秀和 香川大学, 経済学部, 教授 (80330877)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 介護 |
研究概要 |
本科学研究助成事業の一環として、介護の産業化による影響、具体的には介護の経済効果に関する研究を実施した。本研究は助成事業の主たるテーマである「有料老人ホーム」を含む介護市場を産業連関表というマクロ的視点で捉え、全国及び四国4県を対象にその経済効果を検証したものである。 最新の産業連関表により介護の経済効果を様々な角度から分析した結果、四国における介護の経済効果は全国と比べて数値的に低い水準に止まることが明らかとなった。介護保険の普及により地方経済にとって介護の存在感が大きくなっていることが予想されたため少々意外な結果となった。介護の経済効果を公共事業並びに医療・保健と比較した分析では、一次効果と追加効果の違いから三者の関係性が見て取れた。投入係数が高く粗付加価値係数の低い産業(三者のなかでは公共事業が主に該当する)ほど一次効果が大きく追加効果が小さい。他方、投入係数が低く粗付加価値係数が高い産業(介護が主に該当)ほど一次効果が小さく追加効果が大きい。最終的な総効果は一次効果と追加効果の相対関係で決まるが、介護のような労働集約型産業では総効果に占める追加効果の割合が高い。そのため総効果で介護を上回ろうと思えば、一次効果が相当程度高くなければならない。実際に全国や四国4県で比較したところ、一次効果で勝る公共事業や医療・保健が必ずしも総効果でも介護を上回る訳ではなく、場合によっては追加効果に勝る介護に総効果で逆転される場合があった。 日本は本格的な高齢社会を迎え、政府の「社会保障・税一体改革成案」にも見られるように、介護市場は次世代産業として雇用創出等が期待されている。今般のサービス付き高齢者向け住宅の制度化等、民間高齢者施設における規制緩和はその流れに沿うものと言える。本研究の意義は、そうした介護市場の拡大が経済に及ぼす影響を、伝統的な産業連関分析によって検証した点にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究の目的」で記した有料老人ホーム等の民間介護施設を含む介護市場について産業連関表による経済効果分析を行ったが、これは当初の研究目的である介護市場のミクロ的分析というよりも、マクロ的な分析である。 一方、本来の目的であるミクロ的分析については、その前段階として民間介護施設に関するデータセット作成のためのひな形を本年度中に作成し、それを基にデータ入力作業を外部業者に依頼することになっていたが、ひな形がまだ完成しておらず、その影響で外部業者へのデータ入力依頼も次年度に延期することになった。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実施計画」では、有料老人ホーム等の民間高齢者施設のミクロ的分析のためのデータセット作成を本年度の中心課題としていたが、研究代表者の興味もあり、どちらかというとマクロ的分析に該当する介護産業の経済効果を中心課題とすることになってしまった。それについてある程度の成果は得られたものの、本来目標としていたミクロ的分析の進捗状況に遅延が生じる結果となってしまった。 上記の事情を踏まえて、今後は実施計画に記したように、データセット作成のためのひな形の完成を急ぎ、次年度の早い段階でデータ入力の外部業者への委託を終えるなど、研究の方向性を計画に記した本来の軌道に戻すことが今後の研究の推進方策である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究の推進方策にも記したとおり、有料老人ホーム等の民間高齢者施設に関するデータセット作成のための外部業者によるデータ入力費用を次年度の研究費として計上、使用する。その他、研究関連書籍の購入費、資料収集のための旅費としての使用を予定している。
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