研究課題/領域番号 |
23730240
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
中澤 純治 高知大学, 教育研究部総合科学系, 准教授 (30346704)
|
キーワード | 地域産業連関表 / 産業連関分析 / Non-survey法 / 特化係数 / 地域供給係数 |
研究概要 |
市町村などの小地域レベルにおける地域産業連関表の推計には、しばしばNon-Survey法が利用されるが、これら手法の有効性については、未だ体系的に検証されていない。本研究では、日本のデータを適用した場合、①どのNon-Survey法が有効なのか?、②どのような条件(地域特性、産業特性、地理特性等)においてNon-Survey法が有効となるのか?について、都道府県産業連関表及び地域産業連関表のデータを用いて検証を行うことを目的としている。 本研究では、現在利用可能な47都道府県および9地域の全てを評価対象としてNon-survey法の有効性の検証を行い、検証結果の普遍性を担保している。また、Non-survey法が効果的に利用できる特性を明らかにすることで、地域特性に見合ったNon-survey法の選択が可能となり、ますます重要度が高まると考えられる小地域レベルの産業連関表の推計に際して、推計コストを削減し、かつ推計精度を現状よりも飛躍的に向上させることが出来ると考えられる。 本年度は研究実施計画および昨年の実施状況を踏まえながら、①47都道府県地域産業連関表データベースの完成、②9地域産業連関表データベースの最終調整、③構築を行った9地域産業連関表データベースおよび47都道府県地域産業連関表データベースを用いたNon-Survey法の有効性の検証、④日本におけるNon-Survey法の利用実態調査(岩手県宮古市、釜石市、大船渡市、宮城県多賀城市、塩竃市、京都府舞鶴市、高知県)、⑤学会報告(環太平洋産業連関分析学会)を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究実施計画および昨年の実施状況を踏まえながら、以下の5項目を実施した。①47都道府県地域産業連関表データベースの構築作業(47都道府県、1990年、1995年、2000年、2005年、産業中分類)、②9地域産業連関表データベースの調整作業(経済産業局、1990年、1995年、2000年、2005年、産業中分類)、③構築を行った9地域産業連関表データベースおよび47都道府県地域産業連関表データベースを用いたNon-Survey法の有効性の検証作業、④日本におけるNon-Survey法の利用実態および産業連関表整備に伴う問題点の整理、⑤研究成果の学会での報告、である。 ①については、データ等の制約から95%程度の進捗率である。②については終了している。③については、現在、検証作業を進めており、2013年度環太平洋産業連関分析学会等で成果の一部を報告予定である。④については、当初の計画以上の地域でのヒアリング調査を行うことができ、地域産業連関表作成時の移輸出・移輸入の推計課題についてまとめることができた。⑤については、本年度は環太平洋産業連関分析学会(第23回、関西大学)において学会報告を行い、中村良平・中澤純治・松本明「木質バイオマスを活用したCO2削減の地域経済効果 ~中山間地における小地域産業連関表作成による地域比較~」(環太平洋産業連関分析学会報告論文、関西大学、2012年11月)において、また現在、京都市が作成中である京都市産業連関表の作業部会において当該研究で得た知見を盛り込むことができ、研究者との意見交換を行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は「データベースの構築(①都道府県、②広域地域)」と「Non-suevey法の有効性の検証(①都道府県、②広域地域)」の2つから構成される。データベースの構築(①都道府県、②広域地域)に関してはほぼ終了している。「Non-suevey法の有効性の検証(①広域地域)」については平成25年度前期にブラッシュアップを図る。「Non-suevey法の有効性の検証(②都道府県)」についても同様である。 平成25年度は、上記の結果をふまえTykkylainen(2010)の分析方法を用いて、どのような条件(地域特性、産業特性、地理特性等)においてNon-Survey法が有効となるのかについて明らかにする。さらに、これまでの研究成果をまとめ、日本における地域産業連関表の推計にかかるNon-survey法の有効性について、実証的・理論的構築を行い、総括する。これらを踏まえ、日本における地域産業連関表の推計にかかるNon-survey法の有効性について、実証的・理論的構築を行い、総括を行う。国内外の研究協力者との意見交換によって研究精度の向上につとめる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当該研究費が生じた状況については、主として①47都道府県地域産業連関表データベースの構築(47都道府県、1990年、1995年、2000年、2005年、産業中分類)が、産業分類・概念の調整作業の遅れから2012年度に完成に至らなかったためである。この部分に関しては、当該目的のために使用し、平成25年度早期の完成を目指す。また、こうしたデータベースの調整が必要であったため、分析結果は必ずしも最終的にfixしたものではなかった。そのため、海外雑誌論文への投稿原稿の校正費については使用していないが、完成次第支出する。最後に、IIASAでのセミナー開催についてはLeena Ilmora博士との日程調整がつかず延期となったが、平成25年度中に開催したい。 上記の修正点を加え次年度の研究費の使用計画については、概ね申請時の研究実施計画に基づき実施する。具体的には、以下の3項目である。①構築を行った地域産業連関表データベースを用いて、Non-Survey法の有効性の検証を行う。②どのような条件(地域特性、産業特性、地理特性等)においてNon-Survey法が有効となるのかについて検証を行い、Non-Survey法ごとの利用可能条件について検証を行う。③学会での研究報告、④国内外の研究協力者(国内:大学研究者、民間シンクタンク、高知県統計課、四国経済産業局統計課等、海外:Tykkylainen博士、ヨーエンス大学、フィンランド)との意見交換によって研究精度の向上につとめる。さらに、国外での情報発信を強化するために、上記に加えてInternational Institute for Applied System Analysis(Austria)でのセミナー開催を計画している。
|