本研究の目的は、市町村などの小地域レベルにおける地域産業連関表の推計の際に利用されるNon-survey法の有効性について、既存研究の成果を踏まえながら日本のデータを用いて精度の検証を行い、利用可能なNon-survey法の検討を行うことにある。具体的には、①どのNon-Survey法が有効なのか?②どのような条件(地域特性、産業特性、地理特性等)においてNon-Survey法が有効となるのか?これらについて、日本の都道府県産業連関表及び地域産業連関表(地域間産業連関表)のデータを用いて検証を行う。 検証の結果、日本のデータにおいてはFLQ法におけるパラメータδは既存研究とは異なる値を示すということ(地域間産業連関表データを利用)、パラメータδを産業別に推計することで最適なパラメータを得ることが可能であること、製造業ではいくつかの産業を除けばLQと自給率(移輸入率、移輸出率)には正の相関関係にあること、が特徴として明らかとなった。 こうした結果を基に最終年度は、これまでの研究で得た知見をまとめ、学会報告や各種研究会での報告、現場レベルでの課題に答えるための行政担当者との意見交換(高知県、京都府京都市、京都府亀岡市、北海道下川町、岩手県宮古市、岩手県釜石市、宮城県多賀城市、新潟県上越市など)等を積極的に行った。また、今後の研究の発展の方向性として、IIASA、UNIDOの担当者と意見交換を行った。その結果、小地域レベルにおけるNon-survey法を活用した産業連関表の作成は、Agent-based modelの初期データセットの精度向上や分析対象地域の任意設定の可能性に貢献することや、途上国支援の中長期的なプロジェクト評価(IO表の考え方を応用した技術の自給率向上指標)に大きな期待が寄せられていることがわかり、研究成果の社会的還元への期待が大きいことを改めて認識した。
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