経済主体は、行動する時、少なからず他人や他社に影響を受けている。それは、どのような範囲・属性のグループに影響を受けているのだろうか。その違いは、社会の動きにどのような影響をもたらすのだろうか。 この経済環境を分析するため、経済主体が、自分の属性だけでなく、周りの環境や社会全体の環境から影響を受け、意志決定を行う社会的相互依存モデルを使用した。 分析対象として、企業間の同調性が必要なカルテルの形成を取り上げた。具体的な事例として医療機関による予防接種の価格カルテルを社会的相互依存モデルを使用して分析した。予防接種は、自由診療であり、標榜科目に関係なく各病院は自分で値段を付けることができる。価格付けが、標榜科目に関係ないことから近隣(地域)で価格競争が起こる可能性が高くなる。この競争を避けるため医療機関は価格カルテルを行っていたが、カルテルに参加した医療機関は約半数に限られた。この失敗したカルテルのデータを利用して、カルテルの形成要因の分析を行った。結果として、医療機関属性、局所的な需要だけでなく、近隣の病院のカルテル参加率に強く正の影響を受けていることが分かった。つまり、同調的な行動をしている経済環境であることを示すことができた。同調的に行動した場合、2、3の病院だけ、勧告を行えば(見せしめ政策)、社会的乗数の大きさに応じて、地区全体に広まる可能性がある。この推定結果は、新しい競争政策の可能性も示している。 本研究の一部分は、海外のレフェリー付き雑誌への投稿を行い、出版が認められている。
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