研究概要 |
近年、医師不足が深刻な問題となっているが、長い間政府は絶対的医師不足については認めず、医師は十分にいるが地域や診療科によって偏りがあるために医師不足が生じているという相対的医師不足の見解であった。しかしながら、2008年2月、政府はようやく絶対的医師不足を認めた。 絶対的医師不足に対する政府の対策として、医学部定員の増加が挙げられる。確かに医学部の定員は2007年度と比べると1,436人も増加しているが、医師不足が解消したとは言い難い。現在も医師不足から生じる医師の長時間労働などが問題となっており、当直を担う勤務医の8割は32時間以上の連続勤務を強いられている現状などが報告されている。 それを踏まえ、本研究で分析した内容は4点ある。1点目は医師不足の現状である。OECD加盟国を分類したうえで、比較検討した結果、日本の医師は絶対的不足が生じていることが明らかとなった。2点目は看護師不足の現状である。分類したOECD加盟国を対象に比較検討した結果、日本の看護師も医師同様、絶対的に不足していることが明らかとなった。3点目は医師が健康を害する要因についての分析である。「勤務医労働実態調査2012」によって得られた個票データを統計的手法を用いて分析した結果、医師の健康状態を改善するためには、時間外労働を減らすことや休暇を増やすことよりも、毎日の通常業務に伴う労働時間を減少させることが有効であることが明らかとなった。4点目は医師の離職意識を高める要因についての分析である。「勤務医労働実態調査2012」によって得られた個票データを統計的手法を用いて分析した結果、医師の離職意識を改善するためには、1日の労働時間や時間外労働を減らすことや休暇を増やすことよりも、宿直回数を減少させることが有効であることが明らかとなった。 本研究が医師や看護師の職場環境の改善の一助となることを期待したい。
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