本研究では、汚染削減のための財・サービスを提供する環境産業の役割について、経済理論を用いて分析を行ってきた。昨年作成した論文の中に、公正賃金に基づく失業が存在する経済を想定し、環境産業の雇用効果を中心に分析した"Environmental Goods and Measures for their Promotion: An Analysis Using a Fair Wage Model"があるが、平成26年度はこの論文を査読誌に投稿した。そして現在、排出削減財の購入補助金と環境産業自体への生産補助金を比較検討に主眼を置く方向で、改定作業を行っている。
一方、失業の議論を含めてはいないものの、新たに環境産業の一種であるリサイクル産業に着目し、緑の消費者とリサイクルの促進の関係を分析した"Recycling and environmental policies in the presence of green consumers"を作成した。この論文も、Asia-Pacific Economic Association(APEA)の第10回年次総会や日本国際経済学会の第3回関西支部研究会などで共著者を通じて報告を行い、一部修正の後、査読誌に投稿した。
最終年度である平成26年度に作成した2本の論文は、公正賃金に基づく失業と環境産業、環境産業の一種であるリサイクル産業について、それぞれ今後の研究への橋渡しとなるものである。今後、前者については熟練労働者のスキル形成の内生化や不完全競争下の環境産業への応用、後者についてはリサイクル率の内生化の方向へと、分析を発展させていく計画である。
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