本研究は、水質保全政策における排出権取引市場(=「水質取引」)の可能性を探る為、TRS型水質取引モデルとDTRS型水質取引モデルの相対的な経済効率性を、理論的・実証的に検証した。その結果、 (1)TRS型水質取引政策では効率的な取引を阻害し、DTRS型水質取引政策では非効率的な取引を誘引してしまう傾向がある事、 (2)両者の相対的効率性は、汚染企業の空間上の分布に大きく依存する事、 (3)しかしながら、このような非効率な空間的汚染価格によって誘引される経済的損失よりも、誤った総量基準を設定する事による経済的損失の方が遥かに大きい可能性がある事、が明らかになった。実証研究の準備として、米国ミネソタ川流域のリン汚染に関するTMDL規制に着目し、同流域の44汚染者のリン汚染削減費用関数の推計を行い、より現実的かつ厳密な実証研究を行う準備を整える事が出来た。
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