研究概要 |
2012年度は、FTAの形成が貿易自由化を促進するかを考察するための基本モデルを構築するとともに、内生的な技術選択を導入することを目標として、主として以下の論文に取り組んだ。 (1)"Does a Bilateral FTA Pave the Way for Multilateral Free Trade?"では、各国の市場規模が異なる場合、はじめに市場規模の大きい国がFTAを結んだ場合のみOverlapping FTAsを通じてMFTが実現すること、また既存のFTAに域外国を加えるというExpansion of FTAではMFTは実現しないことを示した。 (2)"Expansion of FTA, Overlapping FTA, and Market Size"では、市場規模が同一の2国と市場規模が異なりうる1国からなら3国モデルを用いて、主として、(i) 3国の市場規模が対称的な場合、Expansion of FTAによってMFTは実現するが、Overlapping FTAsでは実現しない、(ii) 当初のFTA締結国に比して、非加盟国の市場規模が小さい場合は、Overlapping FTAsでMFTは実現する、(iii) 非加盟国の市場規模が大きい場合には、Expansion of FTAではMFTは実現しうるが、Overlapping FTAsでは実現しない、という結論を得た。本論文は現在改訂中であり、2013年度前半に投稿予定である。 (3)「自由貿易協定が技術選択に与える影響」では、対称的な3国3市場モデルも用いて、2国間のFTAが各企業の内生的な技術選択に与える影響を考察した。主として、2国間のFTAは加盟国企業の新技術の採用を促進する傾向があるが、加盟国企業の新技術の採用を阻害し、非加盟国企業の新技術の採用を促進する可能性もある、という結論を得た。
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