研究課題/領域番号 |
23730256
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研究機関 | 岐阜聖徳学園大学 |
研究代表者 |
大堀 秀一 岐阜聖徳学園大学, 経済情報学部, 准教授 (70378959)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | リサイクルシステム |
研究概要 |
市場の垂直的関係の下での経済主体間の相互依存関係を考慮した場合の、容器包装廃棄物の回収とEPRの関係を、経済効率性、環境改善性及び経済主体間の公平性の観点から分析を進めた。まず、容器包装廃棄物の回収と拡大生産者責任(EPR)の関係の実態を把握するため、資料収集に努めた。特に、EPR政策の早期の導入例として挙げられる、1991年に制定されたドイツの容器包装政令について、主に、容器包装廃棄物の回収・分別の責任所在をそれまでの公的事業者から、容器包装の製造、販売等に関わる私企業に移されたこと(デュアル・システムの創設)、つまり、リサイクルシステムの民営化が、経済効率性、環境改善性及び経済主体間の公平性にどのような影響を与えるのか、そして、生産・販売‐消費‐廃棄物処理・リサイクルといった垂直的関係における各経済主体間の戦略的相互依存関係にどのような影響を及ぼしているかを考察することが重要であるとの認識に至った。そこで、予備的な研究として、公企業が存在する場合の、垂直的関係の下での望ましい環境税の設定について考察した。ここでは次の結果が得られた。(1)公企業の民営化は環境汚染を低下させる。(2)最適な環境税率はピグー税率に等しい。(3)政府が環境税と民営化水準を同時に決定する場合、公企業を民営化しないこと、すなわち、国有化することが望ましい。(4)公企業の民営化は経済厚生を低下させうる。なお、この研究は海外査読誌に受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度における分析について進展をすすめ、EPR政策の早期の導入例として挙げられる、1991年に制定されたドイツの容器包装政令に関する情報収集及び先行研究のサーベイを行うことができた。 また、市場の垂直的関係の下での経済主体間の相互依存関係を考慮した場合の、容器包装廃棄物の回収とEPRの関係を分析するための予備的な理論研究として、垂直的関係の下での公企業の民営化と環境政策についての理論分析を行なった。この研究成果は国際的な査読誌に受理された。
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今後の研究の推進方策 |
今後においては、初年度において収集した事例と予備的な理論研究を基礎として、市場の垂直的関係の下でのEPR政策の望ましいあり方について考察する。具体的には、ドイツ容器包装政令において、容器包装廃棄物の回収・分別が自治体責任から事業者責任へ移されたことは、廃棄物処理部門の民営化と捉えることができるが、このことを踏まえて、廃棄物処理部門が政府から民間企業に民営化される際の、経済効率性及び環境改善性について理論的に分析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度においては、研究の経過報告及び成果報告をするために、国内外の研究会及び学会へ参加するための研究費を使用することを検討している。また、前年度から継続しているEPR政策の事例収集のための書籍購入や調査のための支出を計画している。
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