研究課題/領域番号 |
23730260
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
猪野 弘明 関西学院大学, 経済学部, 准教授 (30546776)
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キーワード | 循環型社会 / 拡大生産者責任 / 産業組織論 |
研究概要 |
本研究の目的は,廃棄・リサイクル問題において,消費後の財の廃棄費用を内部化するための有効な手立てと目されている拡大生産者責任に基づく政策アプローチについて,この政策アプローチが必要となるそもそもの理由,不法投棄の監視(モニタリング)の問題に立ち返り,特に同アプローチが企業の監視問題を考慮しつつ廃棄費用の内部化を図るために有効であることを,理論モデル分析によって明らかにし,拡大生産者責任に経済学的な裏付けを与えることである. 2年目である本年度は,1年目に公刊された論文「Optimal Environmental Policy for Waste Disposal and Recycling When Firms Are Not Compliant」のモデルを活用した試作段階のモデルを精査しつつ,企業の不法投棄監視問題を考慮して拡大生産者責任の意義を明らかにしていく作業を続けた.この過程で,リサイクルの限界便益が生産開始当初から負になるような「Low valued Recycling」においては,上記論文とは様相の異なった最適政策が導かれ,企業のモニタリング問題にも異なる示唆が与えられることが発見され,論文にまとめている最中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では念頭になかった「Low valued Recycling」と通常のリサイクルの企業モニタリングに関する政策的インプリケーションの違いが発見されたため,これを分析するのに追加的な時間が必要になった.ただし,これは研究目的を達成し,企業の拡大生産者責任の意義を明らかにしていくうえで必要な作業である.
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今後の研究の推進方策 |
まずは,すでに進捗している「Low valued Recycling」に関する研究を完全に仕上げ論文にまとめ何らかの形で公開する.この結果も踏まえ,拡大生産者責任に関して構築した試作モデルの分析をさらに進め,計画通りに産業組織論的な寡占モデルと融合させつつ,扱い易くかつ精緻なモデルに改良していく.同時に,最適政策の性質を精査し,拡大生産者責任による政策アプローチが,どのような市場構造において有効な手段となるのかを示し,政策インプリケーションを導き,論文にまとめる.
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次年度の研究費の使用計画 |
分析作業が進捗し論文にまとめる段階に入るため,得られた数学的構造・結果を経済学的に考察・解釈する作業が重要となる.この作業に関しては関連分野の専門家との議論が不可欠であり,学内外の研究会・ワークショップ等での報告・議論が最も重要となる.また論文発表では,査読誌への投稿前に学会での発表を重ね,当該論文の学会での知名度・評価を高める努力をしなければならない.このため,通常の物品費に加えて旅費等が主要な使途となっていくと思われる.
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