研究概要 |
本年度は,構造推定モデルを構築し,自動車保険ミクロデータを用いて厚生損失を大まかなレベルまで推定する作業を行った.まず,Einav and Cohen (2010, AER)をベースにしつつ,日本の自動車保険市場の特徴を考慮してモデルを改良した.具体的には自動車保険料率算定会の料率規制下の自動車保険市場を独占的市場とみなし,そのもとでの厚生損失の大きさを測るモデルを検討した.この結果は,Kitahara and Saito (2011)にまとめられている. 次に,自動車保険のミクロデータを用いて,Kitahara and Saito (2011)で検討したモデルから厚生損失の大きさを推定する作業を行った.現在はその推定結果のチェックとまとめの段階にある. 当初計画からの変更点として,年金の分析を単独ではなく共同で進めることにしたことが挙げられる.これは年金が制度的に複雑であり,制度面での詳細を考慮するため,他の研究者と連携しながら進めた方が良いと判断したからである.具体的には日本大学の宮里尚三氏,慶応大学の別所俊一郎氏と共同で,異なる課題として進めることにした.データはメンバーで相談した結果,独立行政法人経済産業研究所などが公開しているJSTAR(『くらしと健康の調査』)の個票データを利用する.手法的にはEinav and Finkelstein (2011, JEP)をベースにしつつ,年金未加入による厚生損失の大きさなどについて分析を進める予定である.
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