研究課題/領域番号 |
23730262
|
研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
広瀬 恭子 九州産業大学, 経済学部, 准教授 (30435094)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 国際貿易 / 輸送費用 / 経済活動の立地 / 経済厚生 |
研究概要 |
貿易相手国との輸送費用が地域によって異なることを考慮し、国内地域間の企業立地と地域レベルの輸出について研究を行った。具体的には、2国・3地域モデルを用い、自国に複数地域が存在することと、任意の2つの立地点間の財の輸送費用が異なることを仮定した。それらの仮定の下で、貿易相手国の重要な変数が変化したときに、国内の企業の空間的分布が変化することを示す理論モデルを構築した。輸送費用が貿易相手国と自地域との輸送費用が異なる場合、貿易相手国の変数の変化が価格指数に与える効果の大きさが異なるため、各地域の実質賃金への影響の大きさが異なってしまう。その結果、労働者の地域間移住を引き起こし、それが企業の地域間移動を引き起こす。さらに、貿易相手国と自地域の間の輸送費用が低い地域に自国の企業が集中する可能性があることを示した。加えて、自国内の企業の空間的分布が変化する結果として貿易相手国の所得の変化が地域レベルの輸出にも影響を与えるが、その大きさは一様ではなく、輸送費用の大きさによって様々であることを示すことができた。 先行研究のほとんどでは、任意の2つの立地点間の財の輸送費用は完全に同じであることを仮定しているが、実際には、2地点間の財の輸送費用の大きさは様々である。理論モデルから推測されることは、ある市場の変数が何らかの理由で変化したり、変数に何らかの影響を与えるような政策を行使したりしたときに、立地点間を移動できる経済主体や各立地点で経済活動を行う経済主体に対するそれらの変化の影響は、その市場と自地域間の輸送費用の大きさによって各立地点で異なるということである。以上のことから、任意の2地点間に対して非対称な輸送費用を考慮することは、経済活動の立地に関する分析において重要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2011度においては、立地点間の財の輸送費用の非対称性に着目して研究を行ったが、予想していた以上に理論モデルが煩雑になり、企業の立地行動について分析に時間がかかった。環境についてのサーベイを行うまでに至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
2011年度においては、環境に関する文献調査を行うまでに至らなかったことと参加を予定していた学会へ参加しなかったことの2点から、研究費の繰越が発生してしまった。 2012年度内においては、開放経済下の環境政策についての文献サーベイを行う。そして、環境に関する変数の導入の方法を検討し、経済地理の理論モデルへの導入方法を検討する。その後、環境を考慮した下での経済活動の立地を分析できる静学モデルを構築する。加えて、静学モデルの構築後、動学モデルへの拡張を検討したい。実際の動学モデルの構築は、2013年度内を予定している。 動学モデルの構築を行う理由は、研究開発活動の効果を分析することが可能になることである。時間を通じて財の生産や研究開発に関する費用が低下するような場合、また、研究開発活動において外部性が存在するような場合、経済活動の立地点にどのような影響が現われるのか、そして、厚生がどうなるのか分析することができると期待している。 理論モデルの構築と共に、国際学会での報告とリサーチを行い、自身の研究の改善につなげたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
2012度の研究費の使用については、先行文献の購入、数値計算ソフトの購入と旅費を予定している。先行文献の購入については、サーベイを行うために必要である。2011年度に理論モデルを構築した結果、数値計算が必要となる可能性が高いことが予想できるため、2012年度の研究費で数値計算ソフトを購入する予定である。また、国際学会へ参加し、自身の研究成果の報告とリサーチを行いたい。
|