研究課題/領域番号 |
23730263
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
小出 秀雄 西南学院大学, 経済学部, 教授 (10320251)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | レアメタル / 小型家電 / 広域回収 / 回収ボックス / 資源循環 / 引取料金 / 災害廃棄物 / ミクロ経済学 |
研究概要 |
第1年度である平成23年度は、(1)国・福岡県による使用済み小型家電の広域回収モデル事業の調査、(2)民間企業(ソニー(株))と地元自治体(福岡市、北九州市)による小型電子機器の回収モデル事業の調査、(3)東日本大震災に伴う災害廃棄物の回収・分別の調査とその関連付け、(4)理論モデルの構築と学会等での発表、などを行った。 (1)については、先駆的にモデル事業に取り組んでいた福岡県筑後市・大木町・大牟田市を皮切りに、福岡県久留米市・田川市・新宮町、佐賀県基山町、長崎県対馬市・島原市、熊本県熊本市・八代市、宮崎県宮崎市、鹿児島県屋久島町、東京都江東区・八王子市(平成23年度は福岡県の事業に編入)を調査した。特に、各所に回収ボックスを設置している12の自治体での取り組みに注目し、各地に出向き担当者と意見交換し、実際にボックスに入っているものを見せていただき、集積施設などを細かに視察した。 (2)については、自治体担当者との対面およびメールでの意見交換に加えて、商業施設に設置されたすべての回収ボックス(98カ所)の視察を実施した。 (3)に関しては一見関係がなさそうであるが、対象物を速やかに回収・分別し一定期間保存のうえ、できるだけ再資源化しなければならない点で、共通する課題が多いと考える。2011年8月24~26日に、宮城県庁・仙台市役所・東北大学でヒアリングを行い、同県気仙沼市・南三陸町・石巻市・仙台市の仮置き場を視察した。また、2012年3月12~16日に、同県女川町・石巻市・東松島市・松島町・塩竈市・多賀城市・名取市の仮置き場を視察した。 (4)に関しては、モデル分析と上記視察の暫定的な成果を、環境経済・政策学会、廃棄物資源循環学会、東アジアの環境問題の国際シンポジウムなどで口頭発表した。また、論文や活動記録を紙面にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国・福岡県による使用済み小型家電の広域回収モデル事業の調査については、特にボックスを設置する回収方法に注目したうえで、すべての実施自治体を訪問することができた。これは、あらかじめ福岡県環境部の職員と協力関係を築いていたことが大きく、事前の先方との意思疎通がうまくいった。もちろん、ヒアリング項目の作成・送付や回収物を見たいボックスの選定は自分で行ったが、調査を重ねるにしたがって他の自治体での取り組みを紹介できるようになり、お互いに得ることが多くなった。 また、このような調査を進める中で、自治体によってはボックス回収だけではなくピックアップ回収(不燃ごみと同じ袋に入れる、ごみの分別回収時に別の箱を用意する、など)を併用しているところも知り、考察の幅を広げることができた。例えば、ピックアップがメインでボックスはサブ(市民の意識向上の一手段)のところ、ボックスでやっていたがほとんど集まらないので最近ピックアップもやり始めたところなどが存在する。自治体がそれぞれ抱えている固有の事情や回収の進捗に応じて、取り組みの内容を変えていく点は実にダイナミックであり、理論的に思考し政策提言をする上で大変勉強になる体験である。 一方、モデル分析や調査の成果の発表に関して、少しずつではあるが進めることができた。当初の研究実施計画では、第1年度に研究発表することを想定していなかったが、以前論文でふれた、グッズとバッズの論理的整理と包括的な取り扱いに関して数理分析を一歩進め、発表へとつなげることができた。 また、進行中のもう一つの研究課題(経済学と環境システム工学の文理融合研究)と並行する形で、廃棄物の処理に対する個人の主観が経済的成果にどのように影響を及ぼすかについて理論モデルを試案し、発表している。
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今後の研究の推進方策 |
第2年度である平成24年度は、(1)前年度の調査内容の整理と論文化、(2)今年度実施されている回収モデル事業のフォローアップおよび新規調査、(3)理論的考察の追究および回収量の要因分析の試み、などに従事する。 (1)に関しては、回収ボックスの写真を含め、蓄積された調査データが膨大であるため(視察したボックスは290カ所)、これまで取り組んでいた整理作業をスピードアップし、実際の政策運営に役立つような記録、および回収の量と質に関する実証研究論文((3)と関連)に仕上げて公表する。 (2)については現在、小型家電とそれに内蔵されている希少資源の回収・再資源化を促進する法律が審議に入っているため、過去にモデル事業を実施した自治体の多くが継続することはもちろん(福岡県の広域回収では参加した全自治体が自主財源で継続)、新たに回収に取り組む自治体も増えてきている。したがって、ユニークな新規の回収事業についても、可能な範囲で調査する。 (3)に関しては、現在進めている理論的考察とともに、(1)の過程で整理されたデータをもとに、ボックスによる回収量にどのような要因が効いているかを定性的・定量的に分析する。ボックス毎の回収量を記録している自治体とそうでない自治体があるので、すべての実態を検証できるわけではないが、一部の自治体の協力を得てケーススタディを行うだけでも価値がある。 さらに、研究代表者が中心となって平成23年度に立ち上げた、「福岡環境学際フォーラム」でともに活動しているメンバーからのアドバイスを参考に、発表論文の質を高めていく。同フォーラムには多くの分野の研究者が集まっており、レアメタルの効率的回収や災害廃棄物の適正処理についても、引き続き視察や議論を行う。その成果としての論文等を、各種学会や紙面において随時発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
現地調査と研究発表に要する旅費に440,000円、文具・PC関連の消耗品や研究関連書籍などの物品費に200,000円、資料・成果物の印刷・複写・郵送などその他費目に100,000円を支出する予定である。なお、このうち40,000円分は、前年度からの繰り越し分である。
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