研究課題/領域番号 |
23730265
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研究機関 | 公益財団法人地球環境産業技術研究機構 |
研究代表者 |
長島 美由紀 公益財団法人地球環境産業技術研究機構, その他部局等, 研究員 (50594355)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / オランダ / 気候変動問題 / 環境技術移転 / 応用ゲーム理論 |
研究概要 |
2011年に開催された国連気候変動枠組み条約第17回締約国会合(COP17)では、将来の国際枠組みに関して議定書、法的文書または法的効力を有する合意成果を2020年から発行させ、実施に移す方向で合意がなされた。2020年以降の新枠組みにおいては、今後更なる経済成長が見込まれる新興国及び途上国は何らかの形で削減目標(努力)及び削減報告義務が課される可能性が高く、それらの削減を達成するには先進国による技術移転並びに資金の支援が不可欠であろう。このような背景の下で、環境技術協力に関する協定が結ばれた場合、各国の参加インセンティブや全体的な削減量に与える影響を経済学的に分析することは重要である。本研究では国連気候変動枠組み条約における技術移転及び技術協力の在り方に焦点を当て、環境技術協力に関する協定を締結した場合の提携の安定性を定量分析することが目的である。 2011年度は、環境技術協力に関連する文献のサーベイ及び情報収集を行った。具体的には環境技術協力に関するゲーム理論分析、並びに技術移転と知的財産権保護に関する理論及び実証分析のサーベイを行った。 また、技術協力の一環としてR&D投資を協定締約国間で共同実施する場合に、各国の最適なR&D投資はどのような要素を考慮して決定されるのかを考慮する際に、投資実施者の投資行動を分析することは重要である。さらに、政策評価分析において工学のエネルギーシステムモデルと並んで経済学のマクロ経済モデルおよび応用一般均衡モデルが使用されるが、コスト計算を行う際に考慮されている要素の違いに関する理解が必要である。そのため、2011年度は気候変動問題に関するモデル分析を行う際の投資判断において経済学で使用される資本のユーザーコストとエネルギーシステムモデルで使用される投資回収年数との関係に焦点を当て、投資決定者が直面する潜在的なコストに関して考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国連気候変動枠組み条約の下で国際的に議論されている環境技術協力並びに技術移転に関する交渉の動向や、環境技術協力のゲーム理論及び実証分析のサーベイを実施、並びに主な産業における民間ベースでの技術移転の現況を調査し、情報収集を行った。特に、現在、技術移転に関する国際交渉において環境技術関連の知的財産権の無償開放が途上国から要求されていることを鑑み、技術移転と知的財産権との関係について理論及び実証研究のサーベイを実施した。 また、環境技術協力並びに技術移転の下での投資決定者の戦略的行動を分析する際に考慮すべき投資潜在コストについての考察を行った。
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今後の研究の推進方策 |
環境技術協力に関する国際協定において、理論から導出される最適行動並びに現実の意思決定下で導出される最適行動との比較を行う。その後、理論を基に定量分析を行い、提携の安定性を分析する。 さらに、技術基準の設定等、異なる技術協力の定義の下で技術協力枠組みの下での提携の安定性分析を行う。 モデル分析においては、削減費用関数、温暖化被害関数、経済・社会変数(GDP、温室効果ガス排出量)等のデータを更新する。
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次年度の研究費の使用計画 |
直接経費の細目について、機械装置(約250,000円)、図書購入費(約280,000円)、国内旅費(約40,000円)、海外旅費(約350,000円)、技術指導謝金(約50,000円)、英文校閲(30,000)の研究費の使用を予定している。
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