2015年にパリで開催された国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の第21回締約国会議(COP21)において、2020年以降の新たな気候変動対応の国際枠組みであるパリ協定が採択され、2016年11月に発効した。同協定では、温室効果ガス削減のための技術開発と技術移転の実現の重要性に関する長期ビジョンの共有が合意された。また、気候変動対策に関しては、プレッジ&レビューに基づき、現在170ヶ国が自国の国別貢献(Nationally Determined Contributions: NDCs)をUNFCCC事務局に提出している。各国はNDCsの実施状況を報告し国際的なレビューを受けることが定められており、今後は野心的な削減を自主的に実施するメカニズムの検討が重要である。また、各国のNDCsの中には、自国の気候変動対策を実施する上で、国際的な技術協力並びに資金協力などを条件としている。
本年度は、パリ協定下におけるNDCsと技術協力の課題並びに応用ゲーム理論を用いた関連する先行研究から得られた知見について整理を行った。削減合意と技術協力の合意に関する分析がこれまで行われており、これらの分析は現在のパリ協定下の気候変動交渉を表現していると考えられる。具体的には、技術を提供する国の資金を用いた二国間の技術協力(部分提携)と国連の緑の気候基金(Green Climate Fund)を用いた技術協力(全体提携)との違いが技術を提供する国と技術を受ける国の削減インセンティブに与える影響についてそのメカニズムを検討し、現在における双方の技術協力の課題を整理した。また、技術協力並びに技術のスピルオーバーが協定参加インセンティブに与える影響を分析している先行研究では分析モデルによって導かれる結果が異なることから、各分析モデルの特徴の違いや課題を整理した。
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