本研究の目的は二つの異なる途上国の農村を事例に、社会経済の発展段階の差違が児童労働と教育に対してもたらす影響について、ミクロ・マクロの両面から検証するものである。途上国における児童労働は教育機会を阻害し経済成長を停滞させる可能性を有する一 方で、所得リスクへの対処として重要な役割を果たすものでもあるが、国によって、あるいは社会経済状況によって、その意味は一律でない。この点に留意し、本研究では①家計内の意思決定プロセスの影響、②家計が有する富の効果、③経済グローバル化のインパク ト、の分析を通じ、異なる発展段階にある二ヶ国における児童労働と教育の動向に関して分析を行い、将来の経済開発の可能性を考察するものである。 インドを対象として既存データの整理と実証分析、そして現地調査による研究を行った先の2年に続き、最終年度はケニアの農村にて現地調査を行い、子供の教育投資や諸要因に関する家計データを得ることを中心的課題とした。ケニアのBioversity Internationalの森元泰行博士をカウンターパートととし、協議のうえ対象地域と調査村、調査家計数を決定した。加えて、予備調査を通じて現地での調査に使用する質問票の改訂を図ることとした。当初の計画では、村はKituiとMigwaniから各10村を選定し、さらに一村あたり20家計を無作為抽出することとした。この調査は2014年2~3月に終了した。 この後はこれらケニアの家計調査のデータ整理を進め、実証分析を行う予定である。暫定的な情報ではあるが、インドでは今なお問題を抱えながらも教育が徐々に広く浸透しつつあること、ケニアでは初等教育においてさえなお留年やドロップアウトがきわめて多いという問題を抱えているなど、両国の現状を把握するにあたってきわめて有用なデータが得られた。
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